賛成率の増加を仮説検定で判定する

  1. 賛成率の増加を仮説検定で判定する|問題325の解説

この記事を読むと、住民投票の賛成率が増えたかを、仮説検定と度数分布表で判定する手順がわかります。


【問題】

ある市のシンボルである塔 T が老朽化している。最初の住民投票では、住民の $\frac{1}{8}$ が塔 T の取り壊しに賛成した。2年後、100人の住民を無作為に抽出して調査したところ、19人が取り壊しに賛成と答えた。この結果から、塔 T の取り壊しに賛成する人の割合は増加したといえるか。仮説検定の考え方を用いて答えよ。ただし、基準となる確率は $0.05$ とする。

次の表は、公正な8面さいころを100回投げて1の目が出た回数を記録する実験を800回行った結果である。この表を用いてよい。

1の目が出た回数 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15
度数 2 9 8 24 32 65 71 83 107 94 88 69
1の目が出た回数 16 17 18 19 20 21 22 23
度数 54 42 25 11 7 5 3 1 800

まずは、8面さいころの1の目が $\frac{1}{8}$ の確率住民の賛成率 $\frac{1}{8}$ の対応を押さえて、自分の力で解いてみてください。

いまから解説します。自分の力で解きましたか?


【解説と解答】仮説検定で賛成率の増加を判定する

導入:なぜ8面さいころの表を使うのか

住民の賛成率が $\frac{1}{8}$ のとき、100人を無作為に調査して賛成者が $X$ 人になる確率は、二項分布 $\mathrm{B}(100, \frac{1}{8})$ に従います。

一方、8面さいころの1の目が出る確率も $\frac{1}{8}$ です。100回投げて1の目が出た回数も、同じく $\mathrm{B}(100, \frac{1}{8})$ に従います。

だから、問題の度数分布表は「賛成率が $\frac{1}{8}$ のとき、100人中 $X$ 人が賛成した」という状況のシミュレーションとして使えます。

取っ掛かりのステップ

  1. 帰無仮説と対立仮説を立てる(賛成率は $\frac{1}{8}$ のままか、増えたか)
  2. 観測値は 19 人。賛成率が増えたかを調べるので、19 人以上の確率が重要
  3. 度数分布表から、19 人以上の相対度数(割合)を求める
  4. その割合が 0.05 より小さいかで判定する

使う武器(公式・定理)

  • 仮説検定:帰無仮説(変化なし)を立て、観測値が「まれにしか起きないか」を確率で判定する
  • 有意水準 0.05:確率が 0.05 より小さいとき、帰無仮説を棄却する(変化ありと判断する)
  • 二項分布:$n$ 回の試行で確率 $p$ の事象が $X$ 回起きるとき、$X \sim \mathrm{B}(n, p)$
  • 8面さいころの1の目:確率 $\frac{1}{8}$。100回投げた回数は $\mathrm{B}(100, \frac{1}{8})$ に従う

既習の方はこのセクションを読み飛ばして構いません。


思考のプロセス(Step by Step)

ステップ1:帰無仮説と対立仮説

  • 帰無仮説 $H_0$:賛成率は $\frac{1}{8}$ のまま(変化なし)
  • 対立仮説 $H_1$:賛成率は増加した($\frac{1}{8}$ より大きい)

「増加したといえるか」を判定するので、片側検定です。


ステップ2:観測値と「まれさ」の基準

観測値は 19 人が賛成です。賛成率が増えたかを調べるので、19 人以上の確率($P(X \geq 19)$)が小さければ、帰無仮説を棄却します。


ステップ3:度数分布表から 19 人以上の割合を求める

度数分布表は、$\mathrm{B}(100, \frac{1}{8})$ に従う試行を 800 回シミュレーションした結果です。19 人以上の度数は、

$$ 11 + 7 + 5 + 3 + 1 = 27 $$

(19 人:11 回、20 人:7 回、21 人:5 回、22 人:3 回、23 人:1 回)

したがって、19 人以上の相対度数(割合)は、

$$ \frac{27}{800} = 0.03375 $$


ステップ4:有意水準で判定する

基準となる確率(有意水準)は $0.05$ です。

$$ 0.03375 < 0.05 $$

なので、帰無仮説を棄却します。

:塔 T の取り壊しに賛成する人の割合は増加したといえる。


【まとめ】仮説検定で賛成率の増加を判定するポイント

  • 帰無仮説:賛成率は $\frac{1}{8}$ のまま(変化なし)
  • 対立仮説:賛成率は増加した(片側検定)
  • 8面さいころの表:$\mathrm{B}(100, \frac{1}{8})$ のシミュレーション。賛成率 $\frac{1}{8}$ のときの100人中の賛成者数に相当
  • 19 人以上の割合:$\frac{27}{800} = 0.03375$
  • 判定:$0.03375 < 0.05$ なので帰無仮説を棄却。賛成率は増加したといえる

【解き直しのすすめ】本当に理解できているか確認する

「わかったつもり」を防ぐには、何も見ずに自分の手で解き直すことが大切です。

解説を読む(インプット)と、自分で解く(アウトプット)は別の力です。解説を見ながらだと「理解した気」になってしまいます。

明日、何も見ずにこの問題が解けるかテストしてみてください。それが本当の実力です。


スペシャリストの視点

仮説検定は、アンケート結果品質管理など、実務でよく使われます。「割合が増えたか」を判定するとき、「たまたま」の可能性を確率で評価する発想が重要です。有意水準 0.05 は「5% 以下のまれさなら、変化ありと判断する」という基準で、社会調査や医学研究でも広く使われています。


【最強の暗記法:絞り込みリコールシート】

□ 問題:この問題で、なぜ8面さいころの度数分布表を使うか?

□ 答:8面さいころの1の目は確率 $\frac{1}{8}$。100回投げた回数は $\mathrm{B}(100, \frac{1}{8})$ に従い、賛成率 $\frac{1}{8}$ のときの100人中の賛成者数と同じ分布になる。


□ 問題:帰無仮説と対立仮説は?

□ 答:$H_0$:賛成率は $\frac{1}{8}$ のまま。$H_1$:賛成率は増加した(片側検定)。


□ 問題:観測値は19人。なぜ「19人以上」の確率を考えるか?

□ 答:賛成率が増えたかを調べるので、19人以上という「多い方」の確率が重要。これが小さいと、帰無仮説を棄却する。


□ 問題:19人以上の度数は?(度数分布表から)

□ 答:19→11、20→7、21→5、22→3、23→1。合計 27。


□ 問題:19人以上の相対度数(割合)は?

□ 答:$\frac{27}{800} = 0.03375$。


□ 問題:有意水準 0.05 で判定するとは?

□ 答:求めた確率(割合)が 0.05 より小さいとき、帰無仮説を棄却する。今回は $0.03375 < 0.05$ なので棄却。


□ 問題:結論は?

□ 答:賛成率は増加したといえる。


□ 問題:$n$ 回の試行で確率 $p$ の事象が $X$ 回起きるとき、$X$ の分布は?

□ 答:二項分布 $\mathrm{B}(n, p)$。


□ 問題:片側検定と両側検定の違いは?

□ 答:片側検定は「増えたか」「減ったか」の一方だけを調べる。両側検定は「変化したか」を調べる。


【友達に教えてあげよう】

仮説検定の考え方でつまずいている友達、周りにいませんか?8面さいころの表を使う理由から、判定の流れまで一気に押さえられる解説です。

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