この記事を読むと、社会科公民の「名目経済成長率」「実質経済成長率」「1人当たりGDP」の違いと計算方法がわかります。
基準問題の紹介
- 単元: 社会科(公民)経済分野 / GDPと経済成長率
- 難易度: 基礎〜標準
- ポイント:
- 名目経済成長率(物価変動を考慮しない)
- 実質経済成長率(物価変動を考慮する)
- 1人当たりGDP(人口規模が異なる国の比較)
この問題を解くための基礎知識
1. 名目GDPと実質GDP
名目GDPは、その年の価格で測ったGDPです。
実質GDPは、物価変動の影響を取り除いたGDPです。
景気の実力を比較するときは、実質GDPが重要です。
2. 経済成長率の公式
名目経済成長率は次の式で求めます。
$$ \frac{本年の名目GDP-前年の名目GDP}{前年の名目GDP} \times 100 $$
実質経済成長率は次の式で求めます。
$$ \frac{本年の実質GDP-前年の実質GDP}{前年の実質GDP} \times 100 $$
実質GDPは本来、基準年価格を使って求めます。
GDPデフレーターを求めるときは、次の式を使います。
$$ GDPデフレーター=\frac{名目GDP}{実質GDP} \times 100 $$
3. 1人当たりGDP
1人当たりGDPは、人口規模の違う国を比較するときに使います。
$$ \frac{GDP}{人口} $$
実質GDPとGDPデフレーターはどちらを先に作るのか
結論から言うと、実務的にも理論的にも「先に実質GDPを作り、そのあとでGDPデフレーターを計算する」と考えるのが自然です。
1. 実質GDPの考え方
実質GDPは、「基準年の価格で、その年の生産量を評価したGDP」です。
言いかえると、次のように考えます。
- 数量はその年のものを使います。
- 価格は基準年に固定します。
たとえば、財がAとBの2つだけあるとします。
- 基準年(0年)の価格: $P_A^0,\ P_B^0$
- 1年目の数量: $Q_A^1,\ Q_B^1$
このとき、1年目の実質GDPは次の式です。
$$ \text{実質GDP}_1 = P_A^0Q_A^1 + P_B^0Q_B^1 $$
つまり「1年目の生産量を、0年の価格で評価する」ということです。
2. 数字で見る具体例
次のようにします。
- 基準年価格: Aは100円、Bは200円
- 1年目の生産量: Aは30個、Bは20個
- 1年目の実際の価格: Aは120円、Bは220円
まず、実質GDPを計算します。
$$ \text{実質GDP}_1 = 100 \times 30 + 200 \times 20 $$ $$ = 3000 + 4000 $$ $$ = 7000 $$
次に、名目GDPを計算します。
$$ \text{名目GDP}_1 = 120 \times 30 + 220 \times 20 $$ $$ = 3600 + 4400 $$ $$ = 8000 $$
最後に、GDPデフレーターを計算します。
$$ \text{GDPデフレーター} = \frac{名目GDP}{実質GDP} \times 100 $$ $$ = \frac{8000}{7000} \times 100 $$ $$ \approx 114.3 $$
この114.3は、「基準年を100とすると、物価水準が約14.3%高い」という意味です。
3. 式の変形と実務での順番
定義式は次です。
$$ \text{GDPデフレーター} = \frac{名目GDP}{実質GDP} \times 100 $$
この式は変形すると、次のようにも書けます。
$$ \text{実質GDP} = 名目GDP \times \frac{100}{GDPデフレーター} $$
数式だけを見ると、デフレーターを先に知っていれば実質GDPを逆算できます。
ただし、統計実務では通常、次の順に作業します。
- 名目GDPを集計します。
- 価格変動の影響を取り除いて実質GDPを作ります。
- 最後に名目GDPと実質GDPからGDPデフレーターを計算します。
そのため、理解としては「実質GDPを先に作り、その結果としてGDPデフレーターが決まる」と覚えると混乱しにくいです。
Level A(少し簡単)
1
名目経済成長率は、物価変動を考慮しますか。考慮しませんか。
2
実質経済成長率は、物価変動を考慮しますか。考慮しませんか。
3
前年の名目GDPが500、本年の名目GDPが550です。名目経済成長率を求めなさい。
4
前年の実質GDPが480、本年の実質GDPが504です。実質経済成長率を求めなさい。
Level B(同じレベル)
5
本年の名目GDPが660、GDPデフレーターが110のとき、本年の実質GDPを求めなさい。
6
前年の名目GDPが600、本年の名目GDPが660です。名目経済成長率を求めなさい。
7
前年の実質GDPが560、本年の実質GDPが600です。実質経済成長率を求めなさい。
8
A国のGDPが900、人口が300、B国のGDPが800、人口が200です。1人当たりGDPが大きいのはどちらですか。
Level C(少し難しい)
9
前年の名目GDPは1000、本年の名目GDPは1080、GDPデフレーターは前年100、本年104です。実質経済成長率を概算しなさい。
10
名目成長率が6%、実質成長率が2%でした。物価の変化はどの方向ですか。
11
A国: 名目GDP 1200、人口 400。B国: 名目GDP 900、人口 200。どちらの1人当たりGDPが高いか答えなさい。
12
「名目GDPが増えたので国民の生活は必ず豊かになった」と言えるか。実質GDPと1人当たりGDPの観点で説明しなさい。
解くときのポイント
- 最初に、名目か実質かを確認します。
- 成長率は「前年差」ではなく「前年に対する割合」で求めます。
- 国どうしを比較するときは、1人当たりGDPを使います。
- 物価が大きく動く年は、名目だけで判断しないことが大切です。
解答解説
問1 の解説
名目経済成長率は、物価変動を考慮しません。
問2 の解説
実質経済成長率は、物価変動を考慮します。
問3 の解説
$$ \frac{550-500}{500} \times 100 $$ $$ = \frac{50}{500} \times 100 $$ $$ = 10 $$ 答えは10%です。
問4 の解説
$$ \frac{504-480}{480} \times 100 $$ $$ = \frac{24}{480} \times 100 $$ $$ = 5 $$ 答えは5%です。
問5 の解説
$$ 660 \times \frac{100}{110} $$ $$ = \frac{66000}{110} $$ $$ = 600 $$ 答えは600です。
問6 の解説
$$ \frac{660-600}{600} \times 100 $$ $$ = \frac{60}{600} \times 100 $$ $$ = 10 $$ 答えは10%です。
問7 の解説
$$ \frac{600-560}{560} \times 100 $$ $$ = \frac{40}{560} \times 100 $$ $$ \approx 7.14 $$ 答えは約7.1%です。
問8 の解説
A国は $$ \frac{900}{300}=3 $$ です。
B国は $$ \frac{800}{200}=4 $$ です。
よってB国の方が大きいです。
問9 の解説
本年の実質GDPは $$ 1080 \times \frac{100}{104} $$ $$ = \frac{108000}{104} $$ $$ \approx 1038.46 $$ です。
前年の実質GDPは1000です。
したがって実質成長率は $$ \frac{1038.46-1000}{1000} \times 100 $$ $$ \approx 3.85 $$ となり、約3.8%です。
問10 の解説
名目成長率より実質成長率が低いので、物価は上昇方向です。
問11 の解説
A国は $$ \frac{1200}{400}=3 $$ です。
B国は $$ \frac{900}{200}=4.5 $$ です。
したがってB国の方が高いです。
問12 の解説
必ずしも言えません。
名目GDPは物価上昇でも増えることがあります。
実質GDPで生産量の伸びを確認する必要があります。
さらに人口増加を考えると、1人当たりGDPは伸びない場合もあります。
友達にも教えてあげよう
ここまで解けたら、名目と実質の違いはかなり整理できています。
同じところでつまずいている友達がいたら、このページを教えてあげてください。
自分の言葉で説明できると、理解がさらに深まります。