【問題】
- 気体発生量 (1) 水酸化カルシウム $\text{Ca(OH)}_2$ (式量 74.0) と塩化アンモニウム $\text{NH}_4\text{Cl}$ (式量 53.5) の混合物を熱するとアンモニアが発生し、水と塩化カルシウムが生じる。水酸化カルシウム $3.70 \text{g}$ と塩化アンモニウム $2.14 \text{g}$ を混合して熱すると、どちらが全部反応するか。
(2) (1)で生じるアンモニアは、標準状態で何 $\text{L}$ か。
まずは自力で解いてみましょう!化学反応式の係数比と、与えられた物質の「モル(物質量)」を比較するのがポイントです。
いまから解説します。自分の力で解きましたか?
【解説と解答】化学反応における「過不足」とアンモニアの計算
導入
化学の計算問題で最もつまずきやすいのが「2つの反応物の量が決まっている」パターンです。どちらかが余り、どちらかが使い切られる。この「限界反応物(全部反応する物質)」を見極めることが、すべての計算のスタートラインになります。今回は、弱塩基の遊離反応を例に、物質量の基本をマスターしましょう。
使う武器(公式・定理)
- 化学反応式の作成: 反応物と生成物を整理し、両辺の原子数を合わせます。
- 物質量(mol)の算出: $\text{mol} = \frac{\text{質量 [g]}}{\text{モル質量 [g/mol]}}$
- 係数比 = 物質量比: 反応式における係数の比は、反応する物質量の比と一致します。
- 気体の体積: 標準状態($ 0^{\circ}\text{C} $、$ 1.013 \times 10^5 \text{Pa} $)において、1 mol の気体は $22.4 \text{L}$ を占めます。
※「モル計算は完璧だ!」という方は、計算過程の確認まで読み飛ばしてOKです。
思考のプロセス(Step by Step)
Step 1: 化学反応式を書く
まずは反応式を完成させます。 水酸化カルシウムと塩化アンモニウムの反応は以下の通りです。
$$ \text{Ca(OH)}_2 + 2\text{NH}_4\text{Cl} \longrightarrow \text{CaCl}_2 + 2\text{H}_2\text{O} + 2\text{NH}_3 $$
この式から、 $\text{Ca(OH)}_2$ 1 mol に対して $\text{NH}_4\text{Cl}$ が 2 mol 反応することがわかります。
Step 2: 用意した物質を「mol」に直す
与えられた質量を式量で割って、それぞれの物質量を求めます。
-
$\text{Ca(OH)}_2$ : $$ \frac{3.70 \text{g}}{74.0 \text{g/mol}} = 0.0500 \text{mol} $$
-
$\text{NH}_4\text{Cl}$ : $$ \frac{2.14 \text{g}}{53.5 \text{g/mol}} = 0.0400 \text{mol} $$
Step 3: どちらが全部反応するか判定する((1)の解答)
反応式の係数比は $\text{Ca(OH)}_2 : \text{NH}_4\text{Cl} = 1 : 2$ です。
もし $\text{Ca(OH)}_2 $$ 0.0500 \text{mol} $ をすべて反応させるなら、 $\text{NH}_4\text{Cl}$ はその 2 倍の $0.1000 \text{mol}$ 必要ですが、実際には $0.0400 \text{mol}$ しかありません。 逆に、 $\text{NH}_4\text{Cl} $$ 0.0400 \text{mol} $ をすべて反応させるなら、 $\text{Ca(OH)}_2$ はその半分の $0.0200 \text{mol}$ あれば足ります。
したがって、塩化アンモニウム $\text{NH}_4\text{Cl}$ がすべて反応し、水酸化カルシウムが余ります。
Step 4: 生じるアンモニアの体積を求める((2)の解答)
反応の基準になるのは、全部反応した「塩化アンモニウム」の方です。 反応式より、 $\text{NH}_4\text{Cl}$ と $\text{NH}_3$ の係数比は $2 : 2$ (つまり $1 : 1$ )です。
発生する $\text{NH}_3$ の物質量は $0.0400 \text{mol}$ となります。 標準状態における体積を求めると、
$$ 0.0400 \text{mol} \times 22.4 \text{L/mol} = 0.896 \text{L} $$
解答
(1) 塩化アンモニウム (2) $0.896 \text{L}$
【まとめ】化学反応の量的関係
- 反応式を正しく書く: 係数ミスはすべての計算を狂わせます。
- 「g」を「mol」へ: 化学の世界の共通言語はモルです。
- 過不足の確認: どちらが先に無くなるか、比率で冷静に判断しましょう。
- 標準状態: $22.4 \text{L/mol}$ をかけるのを忘れずに。
【解き直しのすすめ】実力を定着させるアクション
解説を読んで「わかった」気になるのが一番の落とし穴です。 インプット(解説を読む)とアウトプット(自分で解く)の間には大きな溝があります。
明日、何も見ずにこの問題が解けるかテストしてみてください。それが本当の実力です。 もし途中で手が止まったら、この記事に戻って「思考のプロセス」のどこで詰まったのかを確認しましょう。