正規分布と偏差値 — 合格最低点まで一気に求める

入学試験の得点が正規分布とみなせるとき、偏差値・順位・合格最低点を求める典型問題です。偏差値の定義から始め、標準化の考え方を使って解いていきましょう。


【問題】

ある大学で $500$ 点満点の入学試験を行った。受験者の得点の平均点は $260$ 点、標準偏差は $60$ 点であった。受験者の総数は $6000$ 人で、得点の分布は正規分布とみなせるとき、次の問いに答えよ。

(1) 確率変数 $X$ について、平均を $m$、標準偏差を $\sigma$ とするとき、

$$ T = 50 + \frac{X – m}{\sigma} \times 10 $$

で定まる確率変数 $T$ を偏差値という。$T$ の平均と標準偏差を答えよ。(答えのみで可)

(2) この入学試験で偏差値が $60$ 以上となるためには、何点以上得点すればよいか。

(3) 得点が $290$ 点の受験者は、受験者の中で上から約何番目と考えられるか。

(4) 定員が $1830$ 人であるとき、合格最低点は約何点になるか。

まずは、自分の力で解けるかチャレンジしてみましょう。偏差値の定義と正規分布表の読み方がポイントです。

いまから解説します。自分の力で一度解いてみましたか?


【解説と解答】偏差値・順位・合格最低点の求め方

導入

入学試験のような大規模な試験では、得点分布を正規分布とみなして計算することがよくあります。偏差値は「平均 $50$、標準偏差 $10$ に揃えた値」であり、異なる試験間でも「自分がどのくらいの位置にいるか」を比較できる便利な尺度です。この問題では、偏差値の定義から出発し、得点→偏差値、得点→順位、定員→合格最低点へと、一気に求めていく流れを押さえましょう。


使う武器(公式・定理)

  1. 偏差値の定義

$$ T = 50 + 10 \times \frac{X – m}{\sigma} $$

$X$ の平均を $m$、標準偏差を $\sigma$ とするとき、 $T$ は偏差値となる。

  1. 線形変換の性質

$Y = aX + b$ のとき、

  • $E(Y) = a \cdot E(X) + b$
  • $V(Y) = a^2 \cdot V(X)$、したがって $\sigma_Y = |a| \cdot \sigma_X$
  1. 標準化

$Z = \frac{X – m}{\sigma}$ とおくと、 $Z$ は標準正規分布 $N(0, 1)$ に従う。正規分布表はこの $Z$ の値に対応する確率を読み取る。

  1. 正規分布表の使い方

$P(Z \geq z)$ や $P(Z \leq z)$ を、 $0$ から $z$ までの面積 $P(0 \leq Z \leq z)$ から求める。

既習の方は、この部分は読み飛ばして構いません。


思考のプロセス(Step by Step)

(1) $T$ の平均と標準偏差

$T = 50 + 10 \cdot \frac{X – m}{\sigma}$ において、$\frac{X – m}{\sigma}$ を $Z$ とおくと $T = 50 + 10Z$ です。

$Z$ は標準化した変数なので、 $E(Z) = 0$、 $V(Z) = 1$(標準偏差 $1$)です。

$T$ の平均

$$ E(T) = E(50 + 10Z) = 50 + 10 \cdot E(Z) = 50 + 10 \times 0 = 50 $$

$T$ の標準偏差

$V(T) = V(10Z) = 100 \cdot V(Z) = 100 \times 1 = 100$ より、

$$ \sigma_T = \sqrt{100} = 10 $$

答:平均 $50$、標準偏差 $10$


(2) 偏差値 $60$ 以上となる得点

偏差値 $T = 60$ のときの得点を求めればよいです。

$$ 50 + 10 \cdot \frac{X – 260}{60} = 60 $$

$$ 10 \cdot \frac{X – 260}{60} = 10 $$

$$ \frac{X – 260}{60} = 1 $$

$$ X – 260 = 60 $$

$$ X = 320 $$

偏差値は $X$ について単調増加なので、偏差値 $60$ 以上 ⇔ 得点 $320$ 点以上です。

答:$320$ 点以上


(3) $290$ 点の受験者の順位(上から何番目か)

$290$ 点以上の人数が「上から何番目」に該当します。標準化して正規分布表を利用します。

$$ z = \frac{290 – 260}{60} = \frac{30}{60} = 0.5 $$

$P(X \geq 290) = P(Z \geq 0.5)$ を求めます。

正規分布表より $P(0 \leq Z \leq 0.5) \approx 0.1915$ です。(※標準的な表では $0.5$ のとき $0.1915$ などと与えられる。$P(Z \geq 0) = 0.5$ なので、 $P(Z \geq 0.5) = 0.5 – 0.1915 = 0.3085$。)

実際には、多くの正規分布表では $\Phi(z) = P(Z \leq z)$ の形で与えられ、 $\Phi(0.5) \approx 0.6915$ です。このとき、

$$ P(Z \geq 0.5) = 1 – \Phi(0.5) \approx 1 – 0.6915 = 0.3085 $$

したがって、$290$ 点以上を取る受験者の割合は約 $30.85 \%$ です。

$$ 6000 \times 0.3085 \approx 1851 $$

$290$ 点の受験者は、$290$ 点以上の約 $1851$ 人の中に含まれるため、上から約 $1850$ 番目と考えられます。

答:上から約 $1850$ 番目


(4) 定員 $1830$ 人のときの合格最低点

上位 $1830$ 人が合格するので、合格者は全体の $1830/6000 = 0.305$、すなわち上位 $30.5 \%$ です。

合格最低点を $x$ 点とすると、 $P(X \geq x) = 0.305$ となる $x$ を求めます。

標準化して $z = \frac{x – 260}{60}$ とおくと、 $P(Z \geq z) = 0.305$ です。

$P(Z \leq z) = 1 – 0.305 = 0.695$ となる $z$ を正規分布表から読み取ります。

$\Phi(0.5) \approx 0.6915$、 $\Phi(0.52) \approx 0.6985$ などから、 $0.695$ に近いのは $z \approx 0.51$ です。

$$ z = \frac{x – 260}{60} \approx 0.51 $$

$$ x – 260 \approx 30.6 $$

$$ x \approx 290.6 $$

四捨五入して、合格最低点は約 $291$ 点です。

答:約 $291$ 点


解答(まとめ)

  • (1) $T$ の平均 $50$、標準偏差 $10$
  • (2) $320$ 点以上
  • (3) 上から約 $1850$ 番目
  • (4) 約 $291$ 点

【まとめ】正規分布と偏差値のポイント

  • 偏差値は、得点を「平均 $50$、標準偏差 $10$」の尺度に変換した値。定義式 $T = 50 + 10 \cdot \frac{X – m}{\sigma}$ から、 $T$ の平均は $50$、標準偏差は $10$。
  • 偏差値から得点へ: $T$ についての式を $X$ について解く。
  • 得点から順位へ:標準化 $Z = \frac{X – m}{\sigma}$ で正規分布表を使い、 $P(X \geq x)$ を求める。その割合に総人数を掛けると「上からの人数」になる。
  • 定員から合格最低点へ:合格割合 $=$ 定員 / 総人数 から $P(X \geq x)$ を決め、正規分布表で $z$ を逆算し、 $x = m + z\sigma$ で求める。

【解き直しのすすめ】

「わかったつもり」と「本番で解ける」は別物です。解説を読んだだけでは、数値を変えた類似問題でつまずくことが多いです。

明日、何も見ずにこの問題が解けるかテストしてみてください。偏差値の定義→線形変換の性質→標準化→正規分布表。この流れを自分の手で再現できるか。それが本当の実力です。


【最強の暗記法:絞り込みリコールシート】

□ 問題:偏差値 $T$ の定義式は?

□ 答:$T = 50 + 10 \cdot \frac{X – m}{\sigma}$。$X$ の平均を $m$、標準偏差を $\sigma$ とする。


□ 問題:偏差値 $T$ の平均と標準偏差はそれぞれいくつか?

□ 答:平均 $50$、標準偏差 $10$。標準化した $Z = \frac{X-m}{\sigma}$ の平均 $0$、標準偏差 $1$ を $10$ 倍して $50$ を足すため。


□ 問題:$Y = aX + b$ のとき、 $Y$ の分散は $X$ の分散とどう関係するか?

□ 答:$V(Y) = a^2 V(X)$。定数 $b$ は分散に影響しない。


□ 問題:正規分布で「標準化」とは何か?

□ 答:$Z = \frac{X – m}{\sigma}$ とおく変換。$Z$ は標準正規分布 $N(0, 1)$ に従い、正規分布表が使えるようになる。


□ 問題:得点 $x$ の受験者が「上から何番目か」を求める手順は?

□ 答:$z = (x – m)/\sigma$ を計算し、$P(Z \geq z)$ を正規分布表で求める。その割合に総人数を掛けると、$x$ 点以上の人数(=上からの順位の目安)になる。


□ 問題:合格最低点を求めるとき、合格割合はどう表されるか?

□ 答:合格割合 $=$ 定員 $/$ 総人数。この値が $P(X \geq x)$ になる。


□ 問題:$P(Z \geq z) = 0.305$ から得点 $x$ を求めるには?

□ 答:$P(Z \leq z) = 0.695$ となる $z$ を正規分布表で読み取り、$x = m + z\sigma$ に代入する。


□ 問題:偏差値 $60$ の得点を求める式変形のポイントは?

□ 答:$50 + 10 \cdot \frac{X – m}{\sigma} = 60$ から $\frac{X – m}{\sigma} = 1$ となり、$X – m = \sigma$、つまり $X = m + \sigma$ と解く。


□ 問題:正規分布表で $\Phi(0.5)$ はおよそいくつか?

□ 答:約 $0.6915$。$P(Z \leq 0.5)$ の値である。


□ 問題:$z = 0.5$ のとき、$P(Z \geq 0.5)$ はおよそいくつか?

□ 答:約 $0.3085$。$1 – \Phi(0.5) \approx 1 – 0.6915$ で求まる。


【友達に教えてあげよう】

正規分布と偏差値で悩んでいる友達、周りにいませんか? この解説を読んだあなたは、偏差値の定義から順位、合格最低点まで一気に求める流れを理解できています。

実は、一番力がつく勉強法は「人に教えること」です。友達に解き方を自分の言葉で説明してみてください。説明しようとすると、曖昧だった部分がはっきりしてきます。

もし周りに同じ問題で悩んでいる友達がいたら、このページの URL を送ってあげてください。あなたの一言が、友達の「わからない」を「わかった!」に変えるかもしれません。

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