この記事を読むと、80回投げて48回表が出たコインが「表が出やすい」か、仮説検定と度数分布表で判定する手順がわかります。
【問題】
あるコインを80回投げたところ、表が48回出た。このとき、このコインは表が出やすいと判断してよいか。仮説検定の考え方を用いて、次の(1)(2)の場合について考えよ。
(1) 基準となる確率が $0.05$ の場合
(2) 基準となる確率が $0.01$ の場合
次の表は、公正なコインを80回投げて表が出た回数を記録する実験を200回行った結果である。この結果を用いてよい。
| 表の回数 | 29 | 30 | 31 | 32 | 33 | 34 | 35 | 36 | 37 | 38 | 39 | 40 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 度数 | 1 | 0 | 2 | 5 | 5 | 6 | 10 | 12 | 11 | 15 | 18 | 20 |
| 表の回数 | 41 | 42 | 43 | 44 | 45 | 46 | 47 | 48 | 49 | 50 | 51 | 計 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 度数 | 20 | 17 | 19 | 12 | 8 | 8 | 3 | 4 | 2 | 1 | 1 | 200 |
まずは、公正なコインの表の確率 $\frac{1}{2}$ と度数分布表の対応を押さえて、自分の力で解いてみてください。
いまから解説します。自分の力で解きましたか?
【解説と解答】仮説検定でコインの表が出やすさを判定する
導入:なぜ公正なコインの表を使うのか
「このコインは表が出やすいか」を調べるには、公正なコインのとき、80回中48回以上表が出る確率がどれくらいかを調べます。
公正なコインの表の確率は $\frac{1}{2}$ なので、80回投げて表が出た回数 $X$ は二項分布 $\mathrm{B}(80, \frac{1}{2})$ に従います。
だから、問題の度数分布表は「公正なコインの場合、80回中 $X$ 回表が出た」という状況のシミュレーションとして使えます。
取っ掛かりのステップ:
- 帰無仮説と対立仮説を立てる(公正なコインか、表が出やすいか)
- 観測値は 48 回。表が出やすいかを調べるので、48 回以上の確率が重要
- 度数分布表から、48 回以上の相対度数(割合)を求める
- その割合が有意水準より小さいかで判定する((1)は 0.05、(2)は 0.01)
使う武器(公式・定理)
- 仮説検定:帰無仮説(公正なコイン)を立て、観測値が「まれにしか起きないか」を確率で判定する
- 有意水準:確率が有意水準より小さいとき、帰無仮説を棄却する(表が出やすいと判断する)
- 二項分布:$n$ 回の試行で確率 $p$ の事象が $X$ 回起きるとき、$X \sim \mathrm{B}(n, p)$
- 公正なコイン:表の確率 $\frac{1}{2}$。80回投げた回数は $\mathrm{B}(80, \frac{1}{2})$ に従う
既習の方はこのセクションを読み飛ばして構いません。
思考のプロセス(Step by Step)
ステップ1:帰無仮説と対立仮説
- 帰無仮説 $H_0$:このコインは公正(表の確率は $\frac{1}{2}$)
- 対立仮説 $H_1$:このコインは表が出やすい(表の確率は $\frac{1}{2}$ より大きい)
「表が出やすいと判断してよいか」を判定するので、片側検定です。
ステップ2:観測値と「まれさ」の基準
観測値は 48 回が表です。表が出やすいかを調べるので、48 回以上の確率($P(X \geq 48)$)が小さければ、帰無仮説を棄却します。
ステップ3:度数分布表から 48 回以上の割合を求める
度数分布表は、$\mathrm{B}(80, \frac{1}{2})$ に従う試行を 200 回シミュレーションした結果です。48 回以上の度数は、
$$ 4 + 2 + 1 + 1 = 8 $$
(48 回:4 回、49 回:2 回、50 回:1 回、51 回:1 回)
したがって、48 回以上の相対度数(割合)は、
$$ \frac{8}{200} = 0.04 $$
ステップ4:有意水準で判定する
(1) 基準となる確率が 0.05 の場合
$$ 0.04 < 0.05 $$
なので、帰無仮説を棄却します。
答 (1):表が出やすいと判断してよい。
(2) 基準となる確率が 0.01 の場合
$$ 0.04 > 0.01 $$
なので、帰無仮説を棄却できません。
答 (2):表が出やすいと判断するのは適切でない。
【まとめ】仮説検定でコインの表が出やすさを判定するポイント
- 帰無仮説:コインは公正(表の確率 $\frac{1}{2}$)
- 対立仮説:表が出やすい(片側検定)
- 公正なコインの表:度数分布表は $\mathrm{B}(80, \frac{1}{2})$ のシミュレーション
- 48 回以上の割合:$\frac{8}{200} = 0.04$
- 有意水準 0.05:$0.04 < 0.05$ → 表が出やすいと判断してよい
- 有意水準 0.01:$0.04 > 0.01$ → 表が出やすいと判断するのは適切でない
- 有意水準が厳しくなる(0.05 → 0.01)と、帰無仮説を棄却しにくくなる
【解き直しのすすめ】本当に理解できているか確認する
「わかったつもり」を防ぐには、何も見ずに自分の手で解き直すことが大切です。
解説を読む(インプット)と、自分で解く(アウトプット)は別の力です。解説を見ながらだと「理解した気」になってしまいます。
明日、何も見ずにこの問題が解けるかテストしてみてください。それが本当の実力です。
スペシャリストの視点
有意水準を変えると結論が変わるのは、仮説検定の重要なポイントです。0.05 は「5% 以下のまれさなら変化あり」、0.01 は「1% 以下のまれさなら変化あり」という基準です。0.01 の場合はより慎重に判断するため、同じデータでも「判断してよい」と「適切でない」が切り替わります。実務では、判断の重大さに応じて有意水準を選びます。
【最強の暗記法:絞り込みリコールシート】
□ 問題:この問題で、なぜ公正なコインの度数分布表を使うか?
□ 答:公正なコインの表の確率は $\frac{1}{2}$。80回投げた回数は $\mathrm{B}(80, \frac{1}{2})$ に従い、調査対象のコインが公正なときの表の回数と同じ分布になる。
□ 問題:帰無仮説と対立仮説は?
□ 答:$H_0$:コインは公正(表の確率 $\frac{1}{2}$)。$H_1$:表が出やすい(片側検定)。
□ 問題:観測値は48回。なぜ「48回以上」の確率を考えるか?
□ 答:表が出やすいかを調べるので、48回以上という「多い方」の確率が重要。これが小さいと、帰無仮説を棄却する。
□ 問題:48回以上の度数は?(度数分布表から)
□ 答:48→4、49→2、50→1、51→1。合計 8。
□ 問題:48回以上の相対度数(割合)は?
□ 答:$\frac{8}{200} = 0.04$。
□ 問題:有意水準 0.05 の場合の結論は?
□ 答:$0.04 < 0.05$ なので帰無仮説を棄却。表が出やすいと判断してよい。
□ 問題:有意水準 0.01 の場合の結論は?
□ 答:$0.04 > 0.01$ なので帰無仮説を棄却できない。表が出やすいと判断するのは適切でない。
□ 問題:有意水準を 0.05 から 0.01 に変えると、結論はどうなるか?
□ 答:有意水準が厳しくなるので、帰無仮説を棄却しにくくなる。同じデータでも「判断してよい」と「適切でない」が切り替わることがある。
□ 問題:$n$ 回の試行で確率 $p$ の事象が $X$ 回起きるとき、$X$ の分布は?
□ 答:二項分布 $\mathrm{B}(n, p)$。
【友達に教えてあげよう】
仮説検定で有意水準が変わると結論が変わる問題でつまずいている友達、周りにいませんか?公正なコインの表を使う理由から、判定の流れまで一気に押さえられる解説です。
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