【問題】
【?】 (2)の $\theta$ の値の範囲が $30° \leqq \theta \leqq 90°$ でないのはなぜか。
$0° \leqq \theta \leqq 180°$ とする。次の不等式を満たす $\theta$ の値の範囲を求めよ。
(1) $\sin\theta < \frac{1}{2}$
(2) $\cos\theta > \frac{1}{\sqrt{2}}$
(3) $\tan\theta \leqq -\sqrt{3}$
まずは自分の力で解いてみてください。単位円やグラフで「どの角度で三角関数がその値をとるか」を押さえると、ひらめきやすくなります。
いまから解説します。自分の力で解きましたか?
【解説と解答】三角不等式を満たすθの範囲の求め方
導入
「不等式を満たす $\theta$ の範囲を求めよ」という問題では、 「三角関数がその値をとる角度」を基準に、不等号の向きから範囲を切り出す のが基本です。
「式の値の範囲」を求める問題( $-2\sin\theta + 1$ のとりうる値など)とは異なり、今回は $\theta$ そのものの範囲 を答えます。単位円や $y = \sin\theta$ などのグラフをイメージすると、解きやすくなります。
「解き方」を思い出すための取っ掛かり(初心者向け)
ステップ1:基準となる角度を求める
$\sin\theta = \frac{1}{2}$ となる $\theta$ は? $\cos\theta = \frac{1}{\sqrt{2}}$ となる $\theta$ は? といった「境界になる角度」をまず押さえます。
なぜここから始めるか: 不等式 $\sin\theta < \frac{1}{2}$ の解は、「 $\sin\theta = \frac{1}{2}$ となる角度」の前後で分かれます。境界を押さえないと、範囲を誤ります。
ステップ2:$0° \leqq \theta \leqq 180°$ の範囲で、グラフの増減をイメージする
$0°$ から $180°$ まで、 $\sin\theta$ は $0 \to 1 \to 0$ 、 $\cos\theta$ は $1 \to 0 \to -1$ 、 $\tan\theta$ は $0° \sim 90°$ で正、 $90° \sim 180°$ で負、と変化します。
なぜここを押さえるか: 不等号の向き( $$ か $\leqq$ か)によって、「境界の左側か右側か」が決まります。増減がわかっていないと、どちら側が解か判断できません。
ステップ3:境界を含むか含まないかを不等号で決める
$$ なら境界は含まない、 $\leqq$ や $\geqq$ なら境界を含みます。
この問題でつまずきやすいポイントは以下の4つです:
- $\sin\theta = \frac{1}{2}$ となる $\theta$ が $30°$ と $150°$ の2つ あることを忘れる
- $\cos\theta$ は $0° \leqq \theta \leqq 180°$ で単調減少 なので、 $\cos\theta > \frac{1}{\sqrt{2}}$ の解は1つの区間になる
- $\tan\theta$ は $90°$ で定義されない ので、 $90°$ は含めない
- $\tan\theta \leqq -\sqrt{3}$ は第2象限 ( $90° < \theta < 180°$ )で考える
一緒に見ていきましょう。
使う武器(公式・定理)
1. 主要角の三角関数の値
| 角度 | $\sin$ | $\cos$ | $\tan$ |
|---|---|---|---|
| $30°$ | $\frac{1}{2}$ | $\frac{\sqrt{3}}{2}$ | $\frac{1}{\sqrt{3}}$ |
| $45°$ | $\frac{1}{\sqrt{2}}$ | $\frac{1}{\sqrt{2}}$ | $1$ |
| $60°$ | $\frac{\sqrt{3}}{2}$ | $\frac{1}{2}$ | $\sqrt{3}$ |
| $120°$ | $\frac{\sqrt{3}}{2}$ | $-\frac{1}{2}$ | $-\sqrt{3}$ |
$\tan 120° = \tan(180° – 60°) = -\tan 60° = -\sqrt{3}$ です。
2. $0° \leqq \theta \leqq 180°$ での三角関数の変化
- $\sin\theta$: $0°$ で $0$ → $90°$ で $1$ → $180°$ で $0$(山形)
- $\cos\theta$: $0°$ で $1$ → $90°$ で $0$ → $180°$ で $-1$(単調減少)
- $\tan\theta$: $0°$ で $0$ → $90°$ に近づくと $+\infty$ → $90°$ で定義されない → $90°$ を超えると負 → $180°$ で $0$
既習の方はこのセクションを読み飛ばして構いません。
思考のプロセス(Step by Step)
(1) $\sin\theta < \frac{1}{2}$ ( $0° \leqq \theta \leqq 180°$ )
Step 1:境界となる角度を求める
$\sin\theta = \frac{1}{2}$ となる $\theta$ は、 $0° \leqq \theta \leqq 180°$ の範囲で $\theta = 30°$ と $\theta = 150°$ です。
Step 2:グラフの形をイメージする
$\sin\theta$ は $0°$ で $0$ 、 $30°$ で $\frac{1}{2}$ 、 $90°$ で $1$ 、 $150°$ で $\frac{1}{2}$ 、 $180°$ で $0$ と変化します。
Step 3:$\sin\theta < \frac{1}{2}$ となる区間を特定する
- $0° \leqq \theta < 30°$ のとき、 $\sin\theta$ は $0$ から $\frac{1}{2}$ 未満 → 条件を満たす
- $30° \leqq \theta \leqq 150°$ のとき、 $\sin\theta \geqq \frac{1}{2}$ → 条件を満たさない
- $150° < \theta \leqq 180°$ のとき、 $\sin\theta$ は $\frac{1}{2}$ 未満から $0$ へ → 条件を満たす
$<$ なので、 $\theta = 30°$ と $\theta = 150°$ は含みません。
解答 (1) $\quad 0° \leqq \theta < 30°$ または $150° < \theta \leqq 180°$
(2) $\cos\theta > \frac{1}{\sqrt{2}}$ ( $0° \leqq \theta \leqq 180°$ )
Step 1:境界となる角度を求める
$\cos\theta = \frac{1}{\sqrt{2}}$ となる $\theta$ は、 $0° \leqq \theta \leqq 180°$ の範囲で $\theta = 45°$ です( $\cos$ はこの範囲で $45°$ のときだけ $\frac{1}{\sqrt{2}}$ )。
Step 2:$\cos\theta$ の変化を押さえる
$\cos\theta$ は $0°$ から $180°$ まで 単調減少 します。 $0°$ で $1$ 、 $45°$ で $\frac{1}{\sqrt{2}}$ 、 $90°$ で $0$ 、 $180°$ で $-1$ です。
Step 3:$\cos\theta > \frac{1}{\sqrt{2}}$ となる区間を特定する
$\cos\theta$ が $\frac{1}{\sqrt{2}}$ より大きいのは、 $\theta$ が $45°$ より小さいときです。 $>$ なので $\theta = 45°$ は含みません。
解答 (2) $\quad 0° \leqq \theta < 45°$
補足:(2)のθの値の範囲が $30° \leqq \theta \leqq 90°$ でないのはなぜか
「 $\cos\theta > \frac{1}{\sqrt{2}}$ の解が $30° \leqq \theta \leqq 90°$ では?」と考える人がいます。理由を整理します。
- $\cos 30° = \frac{\sqrt{3}}{2} \fallingdotseq 0.87$ 、 $\cos 45° = \frac{1}{\sqrt{2}} \fallingdotseq 0.71$ 、 $\cos 90° = 0$ です。
- $30° \leqq \theta \leqq 90°$ には $\theta = 45°$ から $90°$ までが含まれます。
- $\theta = 45°$ のとき $\cos\theta = \frac{1}{\sqrt{2}}$ で、不等式は $>$(より大きい) なので、 $45°$ は含みません。
- $\theta = 60°$ や $90°$ では $\cos\theta < \frac{1}{\sqrt{2}}$ なので、条件を満たしません。
- したがって、 $30° \leqq \theta \leqq 90°$ は誤りです。正しくは $\cos\theta$ が単調減少 であることから、 $\frac{1}{\sqrt{2}}$ より大きいのは $\theta < 45°$ のときだけです。
(3) $\tan\theta \leqq -\sqrt{3}$ ( $0° \leqq \theta \leqq 180°$ )
Step 1:$\tan\theta$ が定義される範囲を確認する
$\tan\theta$ は $\theta = 90°$ で定義されません。したがって、 $0° \leqq \theta < 90°$ または $90° < \theta \leqq 180°$ で考えます。
Step 2:$\tan\theta$ が負になる範囲
$0° \leqq \theta < 90°$ では $\tan\theta \geqq 0$ です。 $\tan\theta \leqq -\sqrt{3}$ を満たすのは、 $90° < \theta \leqq 180°$ (第2象限)です。
Step 3:境界となる角度を求める
$\tan\theta = -\sqrt{3}$ となる $\theta$ は、第2象限で $\theta = 120°$ です( $\tan 120° = -\sqrt{3}$ )。
Step 4:$90° < \theta \leqq 180°$ での $\tan\theta$ の変化
$\theta$ が $90°$ に近いとき $\tan\theta \to -\infty$ 、 $\theta = 120°$ で $\tan\theta = -\sqrt{3}$ 、 $\theta = 180°$ で $\tan\theta = 0$ です。
$90°$ から $120°$ まで $\tan\theta$ は $-\infty$ から $-\sqrt{3}$ へ増加し、 $120°$ から $180°$ まで $-\sqrt{3}$ から $0$ へ増加します。
したがって、 $\tan\theta \leqq -\sqrt{3}$ となるのは $90° < \theta \leqq 120°$ です。 $\leqq$ なので $\theta = 120°$ は含みます。 $\theta = 90°$ は定義されないので含みません。
解答 (3) $\quad 90° < \theta \leqq 120°$
解答(まとめ)
(1) $0° \leqq \theta < 30°$ または $150° < \theta \leqq 180°$
(2) $0° \leqq \theta < 45°$
(3) $90° < \theta \leqq 120°$
【まとめ】三角不等式を満たすθの範囲を求めるポイント
- 境界となる角度(三角関数がその値をとる $\theta$ )をまず求める
- $\sin\theta$ は山形 なので、 $\sin\theta < a$ の解は2つの区間に分かれることが多い
- $\cos\theta$ は単調減少 なので、 $\cos\theta > a$ の解は1つの区間になる
- $\tan\theta$ は $90°$ で定義されない ので、第2象限( $90° < \theta < 180°$ )のときは $90°$ を除く
- 不等号が $<$ か $\leqq$ かで、 境界を含むか含まないか を正確に決める
【解き直しのすすめ】本当に理解できているか確認する
「わかったつもり」を防ぐには、 何も見ずに自分の手で解き直す ことが大切です。
解説を読む(インプット)と、自分で解く(アウトプット)は別の力です。解説を見ながらだと「理解した気」になってしまいます。
明日、何も見ずにこの問題が解けるかテストしてみてください。それが本当の実力です。
【最強の暗記法:絞り込みリコールシート】
□ 問題: $0° \leqq \theta \leqq 180°$ のとき、 $\sin\theta = \frac{1}{2}$ となる $\theta$ は?
□ 答: $\theta = 30°$ と $\theta = 150°$ の2つ
□ 問題: $\sin\theta < \frac{1}{2}$ の解が2つの区間に分かれる理由は?
□ 答: $\sin\theta$ が $0° \sim 180°$ で山形に変化するため、 $\frac{1}{2}$ より小さい区間が $30°$ の前と $150°$ の後にできる
□ 問題: $0° \leqq \theta \leqq 180°$ のとき、 $\cos\theta = \frac{1}{\sqrt{2}}$ となる $\theta$ は?
□ 答: $\theta = 45°$ のみ( $\cos$ はこの範囲で単調減少)
□ 問題: $\cos\theta > \frac{1}{\sqrt{2}}$ の解が1つの区間になる理由は?
□ 答: $\cos\theta$ が $0° \sim 180°$ で単調減少するため、 $\frac{1}{\sqrt{2}}$ より大きいのは $45°$ より小さい範囲だけ
□ 問題: $\cos\theta > \frac{1}{\sqrt{2}}$ の解が $30° \leqq \theta \leqq 90°$ でない理由は?
□ 答: $45° \sim 90°$ では $\cos\theta \leqq \frac{1}{\sqrt{2}}$ になる。 $>$ は等号を含まないので $45°$ も含まず、正解は $0° \leqq \theta < 45°$
□ 問題: $\tan 120°$ の値は? なぜ負になるか?
□ 答: $\tan 120° = -\sqrt{3}$ 。第2象限では $\sin > 0$ 、 $\cos < 0$ なので $\tan = \frac{\sin}{\cos} < 0$
□ 問題: $\tan\theta \leqq -\sqrt{3}$ を $0° \leqq \theta \leqq 180°$ で解くとき、 $\theta = 90°$ を含めない理由は?
□ 答: $\tan\theta$ は $\theta = 90°$ で定義されない( $\cos 90° = 0$ のため分母が $0$ )
□ 問題: $\tan\theta \leqq -\sqrt{3}$ の解が $90° < \theta \leqq 120°$ になる理由は?
□ 答: $\tan\theta$ は第2象限でのみ負。 $90°$ 付近で $-\infty$ 、 $120°$ で $-\sqrt{3}$ 、 $180°$ で $0$ なので、 $-\sqrt{3}$ 以下なのは $90° < \theta \leqq 120°$
□ 問題: 三角不等式で「境界を含むか」を決めるのは何か?
□ 答:不等号の種類。 $$ なら含まない、 $\leqq$ や $\geqq$ なら含む
□ 問題: $\sin\theta$ と $\cos\theta$ で、 $0° \leqq \theta \leqq 180°$ のときのグラフの形の違いは?
□ 答: $\sin\theta$ は山形( $0 \to 1 \to 0$ )。 $\cos\theta$ は単調減少( $1 \to 0 \to -1$ )
□ 問題: 三角不等式を解くときの基本手順は?
□ 答:①境界となる角度を求める ②グラフの増減をイメージする ③不等号の向きから解の区間を特定する
【友達に教えてあげよう】
三角不等式で、 $\sin\theta$ の解が2つに分かれる理由や、 $\tan\theta$ で $90°$ を除く理由がピンとこない友達、周りにいませんか?
この解説を読んだあなたは、境界の角度の求め方と、グラフの増減から範囲を切り出す手順を押さえています。たった数分で、入試頻出の3パターンを身につけられる解説は、なかなかありません。
人に教えると、自分の理解が深まります。ラーニングピラミッドでも「教える」が最も定着率の高い学習法といわれています。このページのURLを送るだけでなく、 友達に解き方を自分の言葉で説明してみてください 。教えるつもりで解くと、曖昧だった部分がはっきりします。説明できたら、本物の理解です。
もし周りに同じ問題で悩んでいる友達がいたら、このページのURLを送ってあげてください。あなたの一言が、友達の「わからない」を「わかった!」に変えるかもしれません。