国語の授業で、昔の日本語の文章が出てくることがあります。これを 古文 といいます。今話している日本語と、単語も文の形も違います。
古文の勉強では、単語帳を使う人が多いです。開くと、1つの単語の下に意味がいくつも並んでいます。たとえば「はた」なら「また・そのうえ・あるいは」。全部覚えようとする。テストの文では、手が止まることがあります。
手が止まる理由は、ひとつではありません。
訳そのものを覚えていないとき。訳はいくつか言えるのに、この文ではどれが正解かわからないとき。
どちらも、単語の訳だけ見て、文といっしょに覚えていないと起きやすいです。
単語帳で覚えるときは、その単語帳の 例文(その単語が入っている文)を使います。
教科書で定期テスト対策をするときは、教科書に書いてある文を、1文ずつ覚えます。
単語ごとに訳だけ追うと、テストでは損をしやすいです。
単語帳は例文、教科書は本文
覚えるまとまりは、どちらも「文」です。変わるのは、どの本の文にするか、だけです。
単語帳なら、横に並んだ訳より、載っている例文と、その今の日本語への訳。
教科書なら、単語帳の例文ではなく、授業で読んだ本文。
今の日本語に直した文を、 現代語訳 といいます。文といっしょに覚えるとき、セットにするものは次の3つです。
- 昔の日本語の文
- その現代語訳
- わからなければ後回しでよい、短いメモ
あとから見返せるように、ノートに書いておくと便利です。単語帳の例文に線を引くだけでも構いません。大事なのは、訳の並びではなく、文と現代語訳がセットになっていることです。
教科書の文:「はた言ふべきにあらず」
授業でよく出る古文に、『枕草子』があります。今から約1000年前、清少納言が書いた随筆です。その一節です。
日入り果てて、風の音、虫の音など、はた言ふべきにあらず。
今の日本語に直すと、こうなります。
日がすっかり沈んでからは、風の音や虫の声などは、いまさら言うまでもない。
線が引いてありやすいのが「はた」です。辞書や単語帳をみると、現代語訳がいくつも並びます。
- また
- そのうえ
- あるいは
- それとも
- やはり
- いったい
- はたして
- もしかすると
このうち「また」だけ覚えても、上の「いまさら言うまでもない」にはなりません。
ここで覚える塊は、これです。
はた言ふべきにあらず → いまさら言うまでもない
直前の文では、カラスがねぐらへ飛び急ぐ様子や、雁の列が小さく見える様子をほめています。そのあとで風の音・虫の音が出てくるので、流れはこうです。
カラスや雁ですら、しみじみと心が動く。そのうえ、秋の風や虫の音なんて、わざわざ説明するまでもない。
たとえば、ノートにはこう書きます。
| 書くもの | 書き方の例 |
|---|---|
| 文 | 風の音、虫の音など、はた言ふべきにあらず |
| 現代語訳 | いまさら言うまでもない |
| メモ | はた。この文では「いまさら言うまでもない」 |
同じ『枕草子』に、「いとをかしげなる」と続く文もあります。単語帳の「をかし」は「面白い」と並ぶことがあります。この文で覚える訳は とてもおもしろみがありそうな です。「いと」は「とても」、「をかしげなる」は「おもしろみがありそうな」です。
「べし」は、単語の意味が6つある
古文には、「べし」のように、文の意味を変える小さな言葉もあります。単語帳だと、次の6つが並ぶことがあります。
- 推量(〜だろう)
- 意志(〜しよう)
- 可能(〜できる)
- 当然(〜はずだ)
- 義務(〜しなければならない)
- 適当(〜するのがよい)
この6つを暗記するより、 「はた言ふべきにあらず」=「いまさら言うまでもない」 で覚えたほうが、テストで使えます。
見分けのヒントもあります。あとに「ない」を足す言葉(「ず」「べからず」など)が来たら、「〜できる」の意味になりやすいです。その「ない」がつくので、訳は「〜できない」になります。
人の心は知るべからず。
知るべからず → 知ることができない
駅の「入るべからず」は「入ってはいけない」です。授業では、まずその文の現代語訳を書きます。
今日からの覚え方
いま開いている本から、文を1つノートに書きます。単語帳なら例文、教科書なら本文。単語だけ抜き出さない。
その文の現代語訳は、授業や問題集の訳に合わせます。意味がいくつもある単語なら、メモを1行足します。翌日、文だけ見て訳を思い出します。
1日に3文までで十分です。寝る前に覚えて、朝に思い出すと覚えやすいです。机に座る前に「今日の3文」を決めておくと、始めやすいです。
英語は単語、古文は文
『源氏物語』を書いた紫式部も、『枕草子』を書いた清少納言も、もう新しい本は書けません。昔の人もすでにこの世にいないので、古文の問題に出るような本は、今から出版されません。古い本が新しく見つかることは、ごくまれです。見つかったとしても、あまり知られていない本が教科書に載る可能性はかなり低いです。
英語は違います。本もニュースも、毎日増えます。自分の意見を英語で書く・話す必要もあります。だから英語は、単語を1語ずつ、日本語→英語も英語→日本語も覚えて、自分で使えるようにします。
古文でいま学ぶことは、昔の人が書いた文を、今の日本語で正確に読むことです。1単語ずつ足していけば訳が完成する、という作業ではありません。
| 古文 | 英語 | |
|---|---|---|
| 問題に出る文章 | ほとんど増えない | 毎日増える |
| 目標 | 昔の文を、今の日本語で読む | 自分でも英文を作る |
| 先に覚えるもの | 1文と、その現代語訳 | 単語のいちばん大事な意味 |
英語の get や make も、1語で意味がいくつかあります。いちばん大事な意味を1つ覚えたあと、使い方は例文で足します。
古文を文ごとに覚えるのは、英語より丁寧にやれ、という意味ではありません。
古文の本はもう増えないので、有名な人が書いた、有名な本の、有名な文、つまり教科書や単語帳に載っている文の現代語訳を、そのまま覚えることが大切です。英語の本は増えるし、自分でも英文を書く。先に覚えるものが違うのは、そのせいです。
つまずきやすいところ
「はた=また」で止めると、上の一文で点が落ちます。決めてよいのは「この文では、この訳」です。
単語帳の赤字だけ見ると、文に戻ったときに訳が選べません。先に文を声に出してから、赤字を見ます。
「べし」の意味を6つ言えても、文の後ろを見ていないと選べません。「ない」が続くか、疑問の文か、形を1つ添えます。
一人だと続きにくいとき
やり方はわかっても、家だと古文の暗記が始まらない日もあります。今日やる文を3つだけ紙に書いてから机に座ると、迷いが減ります。それでも25分が始まらないときは、勉強する場所や、一緒に進める人がいると続きやすいです。
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今日やることは、1つだけ
いま開いている本に合わせて、文を1つノートに書きます。単語帳なら例文、教科書なら本文。現代語訳をいっしょに書く。明日の朝、文だけ見て訳を思い出します。
友達に教えてあげよう
古文の単語帳を見ても頭に残らない、と言っている友達はいませんか。
単語帳は例文、教科書は本文。単語ごとに覚えると損しやすい——これだけ伝われば十分です。自分の言葉で説明してみてください。教えると、自分のあいまいなところもはっきりします。同じところで止まっている人がいたら、このページのURLを送ってあげてください。
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