【問題】
酸・塩基の電離
0.10 mol の酢酸を溶かした水溶液がある。酢酸の電離度を 0.016 とすると、この水溶液中に含まれる酢酸分子、酢酸イオン、水素イオンはそれぞれ何 mol か。
- 酢酸分子: mol
- 酢酸イオン: mol
- 水素イオン: mol
まずは自分の力で解いてみてください。電離度の意味を言葉にしながら、酢酸の分子・酢酸イオン・水素イオンがそれぞれ何 mol になるか整理してみましょう。
いまから解説します。自分の力で解きましたか?
【解説と解答】弱酸の電離度と物質量|取っ掛かりから式まで
導入:なぜここで「電離度」に注目するのか
この問題は、弱酸である酢酸が 水に溶けても分子の大部分は残る という性質を、数に落とし込む練習です。
つまずきやすいのは、電離度 $\alpha$ を「割合」として扱えず、酢酸分子・酢酸イオン・水素イオンのどれに、$n\alpha$ や $n(1-\alpha)$ を当てはめるか迷うことです。
取っ掛かりの方針 は次の3つです。
- 電離の化学反応式を書き、 1 mol の酢酸が電離すると何 mol のイオンができるか を確認する
- 電離度は「元の酢酸のうち、電離した割合」なので、 電離した酢酸の物質量は $n\alpha$ と置く
- 残った酢酸分子は 全体から電離した分を引く 、つまり $n(1-\alpha)$ と表す
この順番で進めると、式の意味がブレにくいです。
使う武器(公式・定理)
弱酸の電離(平衡)
酢酸は弱酸なので、水溶液中では次の平衡が成り立ちます。
$$ \text{CH}_3\text{COOH} \rightleftharpoons \text{CH}_3\text{COO}^- + \text{H}^+ $$
電離度 $\alpha$ の意味
溶解した弱酸の物質量を $n$(mol)、電離度を $\alpha$ とすると、平衡時に次の関係が成り立ちます(高校化学の標準的な近似の範囲)。
- 残る酢酸分子の物質量:$n(1-\alpha)$
- 生じる酢酸イオンの物質量:$n\alpha$
- 生じる水素イオンの物質量:$n\alpha$(この反応式では係数が 1 対 1 対 1)
既習の方はこのセクションを読み飛ばしてOKです。
思考のプロセス(Step by Step)
Step 1:与えられた量を整理する
- 溶解した酢酸の物質量:$n = 0.10\ \text{mol}$
- 電離度:$\alpha = 0.016$
Step 2:電離した酢酸の物質量を求める
電離度は「電離した割合」ですから、
$$ n\alpha = 0.10 \times 0.016 = 0.0016\ \text{mol} $$
が、電離してイオンになった酢酸の物質量です。
Step 3:残る酢酸分子を求める
水に溶けた酢酸の物質量は、全部で $n$ mol です。
このうちの一部だけが電離して $\text{CH}_3\text{COO}^-$ と $\text{H}^+$ になり、 残りはまだ $\text{CH}_3\text{COOH}$ の分子のまま です。
ここで整理すると、$n$ mol は次の2つに分かれます。
- 電離して分子ではなくなった分(イオン側に行った分):物質量は $n\alpha$ mol
- まだ分子として残っている分:物質量は「全体 $-$ 電離した分」です
だから、残る酢酸分子の物質量は
$$ n – n\alpha $$
と書けます。これは $n$ をくくると
$$ n – n\alpha = n(1-\alpha) $$
になります。つまり $n(1-\alpha)$ は「全体から電離した分を引いた量」を、因数分解した形 です。
数で確かめます。$n=0.10$ mol、$\alpha=0.016$ のとき、
- 電離した分:$n\alpha = 0.10 \times 0.016 = 0.0016$ mol
- 残る分子:$n – n\alpha = 0.10 – 0.0016 = 0.0984$ mol
同じことを $n(1-\alpha)$ で書くと
$$ n(1-\alpha) = 0.10 \times (1-0.016) = 0.10 \times 0.984 = 0.0984\ \text{mol} $$
となり、結果は一致します。
$(1-\alpha)$ は 「電離しない割合(分子として残る割合)」 と読むと覚えやすいです。たとえば $\alpha=0.016$ なら、分子として残る割合は $1-0.016=0.984$(98.4%)です。
Step 4:イオンの物質量を読み取る
反応式の係数より、酢酸イオンと水素イオンは 電離した酢酸と同じ物質量 だけできます。
$$ n(\text{CH}_3\text{COO}^-) = n\alpha = 0.0016\ \text{mol} $$
$$ n(\text{H}^+) = n\alpha = 0.0016\ \text{mol} $$
(この濃度域では、水の自己電離による $\text{H}^+$ は通常無視できる大きさです。)
解答
- 酢酸分子:$0.0984\ \text{mol}$
- 酢酸イオン:$0.0016\ \text{mol}$
- 水素イオン:$0.0016\ \text{mol}$
※設問の有効数字の指定に合わせて、最終的な桁の丸め方をそろえるとよいです。
【まとめ】弱酸の電離度と物質量の要点
- 電離度 $\alpha$ は「溶解した弱酸のうち、電離した割合」です。
- 残る分子は $n(1-\alpha)$、生じる各イオン(係数 1 のとき)は $n\alpha$ です。
- 反応式の係数がズレている場合は、係数比に合わせて $n\alpha$ に倍率を掛けます。
- 水の自己電離は、本問のような弱酸のみの水溶液ではしばしば無視できます。
【解き直しのすすめ】電離度の計算を定着させる
電離度は「式に代入すれば終わり」になりがちですが、本当に身につくのは 何の割合を表しているかを言葉で言えるか です。
- 今日中に、$n$ と $\alpha$ を変えた仮想問題を1問、自分で作って解く
- 明日、反応式を見ずに $n(1-\alpha)$ と $n\alpha$ を書けるか確認する
- 1週間後、二塩基酸や希釈を絡めた発展を1問試す
明日、何も見ずにこの問題が解けるかテストしてみてください。
それが本当の実力です。
【最強の暗記法:絞り込みリコールシート】
□ 問題:弱酸の電離度 $\alpha$ は、何の割合を表しますか?
□ 答:溶解した弱酸のうち、電離した割合です。
□ 問題:酢酸の水溶液での電離の反応式を書いてください。
□ 答:$\text{CH}_3\text{COOH} \rightleftharpoons \text{CH}_3\text{COO}^- + \text{H}^+$ です。
□ 問題:溶解した弱酸の物質量を $n$、電離度を $\alpha$ とすると、残る弱酸分子の物質量は何ですか?
□ 答:$n(1-\alpha)$ です。
□ 問題:同じく、生じる $\text{H}^+$ の物質量は一般に何と表せますか(係数が 1 対 1 のとき)?
□ 答:$n\alpha$ です。
□ 問題:$n=0.10\ \text{mol}$、$\alpha=0.016$ のとき、$n\alpha$ はいくつですか?
□ 答:$0.0016\ \text{mol}$ です。
□ 問題:同じ条件で、残る酢酸分子の物質量 $n(1-\alpha)$ はいくつですか?
□ 答:$0.0984\ \text{mol}$ です。
□ 問題:酢酸イオンの物質量は、なぜ $n\alpha$ になりますか?
□ 答:電離した酢酸 1 mol あたり、酢酸イオンが 1 mol できるからです。
□ 問題:強酸の電離度は、近似としてどのくらい扱いますか?
□ 答:ほぼ 1(完全電離)として扱うことが多いです。
□ 問題:電離度の計算で典型的なミスは何ですか?
□ 答:残る分子に $n\alpha$ を使ってしまう、または $\alpha$ の意味を逆に解釈することです。
□ 問題:平衡の矢印が $\rightleftharpoons$ であることは、何を意味しますか?
□ 答:正逆反応が成立し、一部しか電離しない(弱酸・弱塩基)ことを意味します。
【友達に教えてあげよう】
「電離度って、結局どこに掛けるの?」と迷っている友達、周りにいませんか?
この問題は、弱酸の物質量計算の型をそのまま固められます。
このページを読んだあなたは、$n(1-\alpha)$ と $n\alpha$ の意味をすでに言葉にできる状態です。
短時間で式の筋道まで整理できるのは、定期テストでも効きます。
教えるつもりで説明すると、自分の理解も一段深まります。
友達に「残る分子は全体から電離分を引く」と自分の言葉で伝えてみてください。
もし同じ単元で止まっている友達がいたら、このページのURLを教えてあげてください。
あなたの一言が、友達の「式が不安」を「計算が速い」に変えるきっかけになります。