
【問題】
62 質量 $m$ の物体Pと質量 $M$ のおもりQを軽い糸でつなぎ、滑らかに動く滑車を通してPを傾角 $\theta$ の粗い斜面上に置いた。Qを鉛直につるして静かにはなしたところ、Qは下降し始めた。Pと斜面の間の動摩擦係数を $\mu’$、重力加速度の大きさを $g$ とする。
(1) 物体の加速度の大きさを $a$、糸の張力の大きさを $T$ として、物体P、おもりQについて運動方程式をそれぞれ立てよ。 (2) 加速度の大きさ $a$ を求めよ。 (3) 糸の張力の大きさ $T$ を求めよ。 (4) 物体が動きだすための静止摩擦係数 $\mu$ の条件を示せ。
【解答】
(1)
-
物体P: $$ma = T – mg\sin\theta – \mu’mg\cos\theta$$
-
おもりQ: $$Ma = Mg – T$$
(2) $$a = \frac{M – m(\sin\theta + \mu’\cos\theta)}{M+m}g$$
(3) $$T = \frac{Mm(1+\sin\theta + \mu’\cos\theta)}{M+m}g$$
(4) $$\mu < \frac{M – m\sin\theta}{m\cos\theta}$$
導入
こんにちは、スマスクです! この記事では、斜面上の物体と滑車に吊るされたおもりが糸で繋がれた**「連結物体の運動」**に関する問題を解説します 🏋️♀️。 一見複雑に見えますが、解き方はとてもシンプルです。
- 物体ごとに「かかっている力」をすべて図示する
- 物体ごとに「運動方程式 $ma=F$」を立てる
- 連立方程式として解く この3ステップで、どんな連結物体の問題も解くことができます。力の見つけ方から丁寧に解説していきますので、一緒にマスターしていきましょう!
各問題の解説
考え方のポイント
まず、物体PとおもりQにかかる力をすべて図示します。
-
おもりQにかかる力:
- 重力 $Mg$ (下向き)
- 張力 $T$ (上向き) Qは下降するので、下向き( $Mg$ の向き)を「正」として運動方程式を立てます。
-
物体Pにかかる力:
- 重力 $mg$ (真下向き)
- 張力 $T$ (斜面を上向き)
- 垂直抗力 $N$ (斜面から垂直に受ける力)
- 動摩擦力 $F’$ (運動を妨げる向き。Pは斜面を上がるので、斜面を下向きに $F’ = \mu’N$ が働きます)
Pは斜面を上向きに動くので、斜面を上向き( $T$ の向き)を「正」として運動方程式を立てます。 このとき、重力 $mg$ は斜面に平行な成分と垂直な成分に分解する必要があります。
- 斜面に平行な成分: $mg\sin\theta$ (斜面下向き)
- 斜面に垂直な成分: $mg\cos\theta$ (斜面を押す向き)
(1) 物体P、おもりQの運動方程式
詳しい解説: 運動方程式 $ma = F$ は、「(質量)×(加速度)=(物体にかかる力の合計)」という意味です。
-
おもりQについて 質量は $M$、加速度は $a$ です。運動の向き(下向き)を正とすると、かかる力は $Mg$ (正) と $T$ (負) です。 したがって、運動方程式は以下のようになります。
答え: $$Ma = Mg – T$$
-
物体Pについて 質量は $m$、加速度は $a$ です。(糸で繋がっているのでQと同じ加速度です) 運動の向き(斜面上向き)を正とします。 かかる力は、
- $T$ (正)
- 重力の斜面成分 $mg\sin\theta$ (負)
- 動摩擦力 $F’$ (負) です。
ここで、動摩擦力 $F’$ は $F’ = \mu’N$ で求められます。Pの斜面に垂直な方向の力はつり合っているので、「斜面を押す力 $mg\cos\theta$」と「垂直抗力 $N$」は等しくなります。 よって $N = mg\cos\theta$ です。 これを代入すると、動摩擦力は $F’ = \mu’mg\cos\theta$ となります。
したがって、Pの運動方程式は以下のようになります。
答え: $$ma = T – mg\sin\theta – \mu’mg\cos\theta$$
(2) 加速度の大きさ $a$ を求めよ。
詳しい解説: (1)で立てた2つの運動方程式を、 $a$ と $T$ の連立方程式として解きます。
(1) $Ma = Mg – T$ (2) $ma = T – mg\sin\theta – \mu’mg\cos\theta$
$a$ を求めたいので、$T$ を消去するのが早いです。 (1)の式から $T = Mg – Ma$ として、これを(2)の式に代入します。 $$ma = (Mg – Ma) – mg\sin\theta – \mu’mg\cos\theta$$ $a$ が含まれる項をすべて左辺に集めます。 $$ma + Ma = Mg – mg\sin\theta – \mu’mg\cos\theta$$ $a$ でくくります。 $$(M+m)a = Mg – mg\sin\theta – \mu’mg\cos\theta$$ $g$ でもくくると、 $$(M+m)a = {M – m(\sin\theta + \mu’\cos\theta)}g$$ 最後に両辺を $(M+m)$ で割ります。
答え: $$a = \frac{M – m(\sin\theta + \mu’\cos\theta)}{M+m}g$$
(3) 糸の張力の大きさ $T$ を求めよ。
詳しい解説: (2)で求めた $a$ を、(1)の $T = Mg – Ma$ の式に代入するのが一番簡単です。 $$T = Mg – M \left( \frac{M – m(\sin\theta + \mu’\cos\theta)}{M+m}g \right)$$ $Mg$ でくくります。 $$T = Mg \left( 1 – \frac{M – m(\sin\theta + \mu’\cos\theta)}{M+m} \right)$$ カッコの中を通分します。 $$T = Mg \left( \frac{(M+m) – (M – m(\sin\theta + \mu’\cos\theta))}{M+m} \right)$$ $$T = Mg \left( \frac{M+m – M + m\sin\theta + m\mu’\cos\theta}{M+m} \right)$$ $$T = Mg \left( \frac{m + m\sin\theta + m\mu’\cos\theta}{M+m} \right)$$ 分子を $m$ でくくり、 $g$ と $M$ をまとめると、きれいな形になります。
答え: $$T = \frac{Mm(1+\sin\theta + \mu’\cos\theta)}{M+m}g$$
(4) 物体が動きだすための静止摩擦係数 $\mu$ の条件
詳しい解説: この問いは(1)〜(3)とは状況が変わり、「動きだす瞬間」の話をしています。 「Qは下降し始めた」とあるので、Pは「斜面を上向きに動きだそう」とされます。 このとき、Pの運動を妨げる向き、つまり斜面下向きに最大静止摩擦力 $F_{max} = \mu N$ が働きます。 ($\mu$ は静止摩擦係数です)
動き出す直前は、PもQもまだ静止しており、力がつり合っています。
- Qの力のつり合い: $T = Mg$
- Pの斜面方向の力のつり合い:
- 上向きの力: $T$
- 下向きの力: $mg\sin\theta$ (重力成分) + $\mu N$ (最大静止摩擦力) よって、$T = mg\sin\theta + \mu N$
- Pの斜面垂直方向のつり合い: $N = mg\cos\theta$
これらの式を $T$ と $N$ を消去するようにまとめます。 $T = Mg$ と $N = mg\cos\theta$ を、Pの斜面方向のつり合いの式に代入します。 $$Mg = mg\sin\theta + \mu (mg\cos\theta)$$ これが、Pが動き出す直前のギリギリのつり合いの状態です。
物体が「動きだすため」には、Qが引く力 $Mg$ が、Pを引き留めようとする力の合計(重力成分+最大静止摩擦力)よりも大きくなければなりません。 $$Mg > mg\sin\theta + \mu mg\cos\theta$$ この不等式を $\mu$ について解きます。 $$Mg – mg\sin\theta > \mu mg\cos\theta$$ 両辺を $mg\cos\theta$(正の数)で割ります。
答え: $$\mu < \frac{Mg – mg\sin\theta}{mg\cos\theta}$$
連結物体の運動まとめ
- 力の図示: まずは物体ごとにかかる力をすべて描き出すことが第一歩です ✍️。
- 運動方程式: 物体ごとに、運動の向きを「正」として $ma=F$ の式を立てます。
- 連立して解く: 立てた2つの式を連立方程式として解くことで、加速度 $a$ や張力 $T$ が求まります 🧮。
- 静止摩擦力: 「動き出す瞬間」の問題では、加速度 $a=0$ のつり合いの状態を考え、最大静止摩擦力($\mu N$)を使って不等式を立てます。
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