平行六面体の他の頂点の座標はどう求める?空間ベクトルの必須テクニックを解説!【数学B】

【問題】

$\mathrm{A}\left(1, -2, -3\right)$, $\mathrm{B}\left(2, 1, 1\right)$, $\mathrm{C}\left(-1, -3, 2\right)$, $\mathrm{D}\left(3, -4, -1\right)$ とする。線分 $\mathrm{AB}$, $\mathrm{AC}$, $\mathrm{AD}$ を3辺とする平行六面体の他の頂点の座標を求めよ。


この問題、まずは自分の力で解いてみましょう。空間図形の問題ですが、ベクトルの考え方を使えば、平面の図形と同じように考えることができます。「平行六面体」の性質をうまく利用するのがポイントですよ。

いまから解説します。 ちゃんと自分の力で解いてみましたか?

【解説】

こんにちは、スマスク数学講師です。

今回は、空間ベクトルを使った図形の問題、特に「平行六面体」の頂点の座標を求める問題について解説します。

空間座標の問題、特に3次元の図形が出てくると、「図がイメージできなくて苦手だ」と感じる生徒さんがとても多いです。でも、安心してください。この問題は、複雑な絵を描く能力を求めているわけではありません。

ポイントは**「ベクトル」の考え方を使うことです。 平行六面体というのは、サイコロを少し歪ませたような箱の形をしています。一番大事な性質は、「向かい合う面がすべて平行四辺形である」**ということです。

平行四辺形ということは、**「向かい合う辺のベクトルが等しい」**ということを意味します。これさえ押さえておけば、平面の問題と同じように解くことができるんです。空間認識能力が鍛えられる良問なので、しっかりマスターしましょう!

1. 基準となるベクトルの成分を計算する

まず、問題文にある「線分 $\mathrm{AB}$, $\mathrm{AC}$, $\mathrm{AD}$ を3辺とする」という情報から、基準となる3つのベクトル $\vec{\mathrm{AB}}, \vec{\mathrm{AC}}, \vec{\mathrm{AD}}$ の成分を計算しておきましょう。

ベクトルの成分は「終点の座標 – 始点の座標」で求められます。

$$ \vec{\mathrm{AB}} = \left(2-1, \ 1-\left(-2\right), \ 1-\left(-3\right)\right) = \left(1, 3, 4\right) $$$$ \vec{\mathrm{AC}} = \left(-1-1, \ -3-\left(-2\right), \ 2-\left(-3\right)\right) = \left(-2, -1, 5\right) $$$$ \vec{\mathrm{AD}} = \left(3-1, \ -4-\left(-2\right), \ -1-\left(-3\right)\right) = \left(2, -2, 2\right) $$これで準備完了です。

2. 平行六面体の図をイメージして、残りの頂点を求める

次に、平行六面体の形をイメージします。頂点 A から3本の辺 AB, AC, AD が伸びている状態です。 残りの頂点は4つあります。それらに名前を付けましょう。

例えば、

  • 面 AB と AC で作られる平行四辺形の残りの頂点を E
  • 面 AB と AD で作られる平行四辺形の残りの頂点を F
  • 面 AC と AD で作られる平行四辺形の残りの頂点を G
  • そして、頂点 A の完全に反対側にある頂点を H

とします。(問題集の解答にある図の置き方と同じです)

それぞれの頂点の座標を、原点 O からの位置ベクトルとして求めていきます。

頂点 E の座標

四角形 ABEC は平行四辺形です。 平行四辺形の性質より、向かい合う辺のベクトルは等しいので、$\vec{\mathrm{AC}} = \vec{\mathrm{BE}}$ が成り立ちます。

求めたいのは点 E の位置ベクトル $\vec{\mathrm{OE}}$ です。これは、点 O から B に行って、そこから E に進むと考えればよいので、

$$\vec{\mathrm{OE}} = \vec{\mathrm{OB}} + \vec{\mathrm{BE}} $$ここで、さきほどの性質 $\vec{\mathrm{BE}} = \vec{\mathrm{AC}}$ を使います。

$$ \vec{\mathrm{OE}} = \vec{\mathrm{OB}} + \vec{\mathrm{AC}} $$成分で計算します。$\vec{\mathrm{OB}}$ は点 B の座標そのものです。

$$\vec{\mathrm{OE}} = \left(2, 1, 1\right) + \left(-2, -1, 5\right) = \left(0, 0, 6\right) $$よって、点 E の座標は $\left(0, 0, 6\right)$ です。

頂点 F の座標

同様に、四角形 ABFD は平行四辺形です。 向かい合う辺のベクトル $\vec{\mathrm{AD}}$ と $\vec{\mathrm{BF}}$ は等しくなります。

$$ \vec{\mathrm{OF}} = \vec{\mathrm{OB}} + \vec{\mathrm{BF}} = \vec{\mathrm{OB}} + \vec{\mathrm{AD}} $$成分で計算します。

$$\vec{\mathrm{OF}} = \left(2, 1, 1\right) + \left(2, -2, 2\right) = \left(4, -1, 3\right) $$よって、点 F の座標は $\left(4, -1, 3\right)$ です。

頂点 G の座標

四角形 ACGD は平行四辺形です。 向かい合う辺のベクトル $\vec{\mathrm{AD}}$ と $\vec{\mathrm{CG}}$ は等しくなります。

$$ \vec{\mathrm{OG}} = \vec{\mathrm{OC}} + \vec{\mathrm{CG}} = \vec{\mathrm{OC}} + \vec{\mathrm{AD}} $$成分で計算します。

$$\vec{\mathrm{OG}} = \left(-1, -3, 2\right) + \left(2, -2, 2\right) = \left(1, -5, 4\right) $$よって、点 G の座標は $\left(1, -5, 4\right)$ です。

頂点 H の座標

最後に、頂点 A の対角にある点 H です。 H にたどり着くルートはいろいろありますが、例えば、先ほど求めた点 F を経由してみましょう。 四角形 AFHC は平行四辺形になるので、$\vec{\mathrm{FH}} = \vec{\mathrm{AC}}$ が成り立ちます。

$$ \vec{\mathrm{OH}} = \vec{\mathrm{OF}} + \vec{\mathrm{FH}} = \vec{\mathrm{OF}} + \vec{\mathrm{AC}}$ $$先ほど求めた $\vec{\mathrm{OF}}$ の成分を使って計算します。

$$\vec{\mathrm{OH}} = \left(4, -1, 3\right) + \left(-2, -1, 5\right) = \left(2, -2, 8\right) $$よって、点 H の座標は $\left(2, -2, 8\right)$ です。

以上で、他の4つの頂点の座標がすべて求まりました。

【解答】

平行六面体を ABFD-CEHG とし、原点を O とする。(図は省略、解説参照) まず、与えられた点からベクトルの成分を求める。

$$ \vec{\mathrm{AB}} = \left(2-1, \ 1-\left(-2\right), \ 1-\left(-3\right)\right) = \left(1, 3, 4\right) $$$$ \vec{\mathrm{AC}} = \left(-1-1, \ -3-\left(-2\right), \ 2-\left(-3\right)\right) = \left(-2, -1, 5\right) $$$$ \vec{\mathrm{AD}} = \left(3-1, \ -4-\left(-2\right), \ -1-\left(-3\right)\right) = \left(2, -2, 2\right) $$平行六面体の各面は平行四辺形である。 したがって、

$$\vec{\mathrm{OE}} = \vec{\mathrm{OB}} + \vec{\mathrm{BE}} = \vec{\mathrm{OB}} + \vec{\mathrm{AC}} $$$$ = \left(2, 1, 1\right) + \left(-2, -1, 5\right) = \left(0, 0, 6\right) $$$$ \vec{\mathrm{OF}} = \vec{\mathrm{OB}} + \vec{\mathrm{BF}} = \vec{\mathrm{OB}} + \vec{\mathrm{AD}} $$$$ = \left(2, 1, 1\right) + \left(2, -2, 2\right) = \left(4, -1, 3\right) $$$$ \vec{\mathrm{OG}} = \vec{\mathrm{OC}} + \vec{\mathrm{CG}} = \vec{\mathrm{OC}} + \vec{\mathrm{AD}} $$$$ = \left(-1, -3, 2\right) + \left(2, -2, 2\right) = \left(1, -5, 4\right) $$$$ \vec{\mathrm{OH}} = \vec{\mathrm{OF}} + \vec{\mathrm{FH}} = \vec{\mathrm{OF}} + \vec{\mathrm{AC}} $$$$ = \left(4, -1, 3\right) + \left(-2, -1, 5\right) = \left(2, -2, 8\right) $$よって、求める座標は $\left(0, 0, 6\right), \left(4, -1, 3\right), \left(1, -5, 4\right), \left(2, -2, 8\right)$

まとめ

  • 平行六面体の性質: すべての面が平行四辺形です。
  • ベクトルの利用: 平行四辺形では向かい合う辺のベクトルが等しい(例:$\vec{\mathrm{BE}} = \vec{\mathrm{AC}}$)ことを利用します。
  • 位置ベクトルの計算: 求める頂点の位置ベクトルを、既知の点の位置ベクトルと、等しいベクトルとの和で表して計算します(例:$\vec{\mathrm{OE}} = \vec{\mathrm{OB}} + \vec{\mathrm{BE}}$)。
  • 成分計算: 最終的には成分の足し算で座標を求めます。符号のミスに注意しましょう。

【解き直しのすすめ】

解説を読んで、「なるほど、そうやって求めるのか」と理解できたでしょうか?

プロの講師として多くの生徒さんを見てきましたが、空間ベクトルの問題は「解説を聞けばわかるけれど、いざ自分で図をイメージして式を立てようとすると手が止まってしまう」という子が本当に多い分野です。

「見て理解すること(インプット)」と「自分でゼロから解けること(アウトプット)」は全く別物です。わかったつもりにならず、計算力を鍛えるためにも、ぜひ一度、解説を閉じて、何も見ずに自力で4つの頂点の座標をすべて求められるまで解き直してみることを強くお勧めします。

途中でわからなくなったら、どこでつまずいたのか、解説と自分の考えを見比べて、理解の穴を埋めていきましょう。その地道な作業が、確実な実力アップにつながりますよ。

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