【問題】
159 $1$ の $3$ 乗根のうち、虚数であるものの $1$ つを $\omega$ とする。このとき、 $\omega^2 + \omega = \fbox{ア}$ , $\omega^{10} + \omega^5 = \fbox{イ}$ , $\frac{1}{\omega^{10}} + \frac{1}{\omega^5} + 1 = \fbox{ウ}$ , $(\omega^2 + 5\omega)^2 + (5\omega^2 + \omega)^2 = \fbox{エ}$ である。 (関西大)
⚠️ 生徒のみなさんへ ⚠️ まずは、この問題を自分のノートに書き写して、何も見ずに解いてみましょう。 「$ \omega $(オメガ)」の問題は、公式を丸暗記するのではなく、「なぜそうなるか」を理解して使うのがポイントです。
…解けましたか? それでは、解説を始めます。自分の答え合わせとして活用してくださいね。
【解説】 $1$ の $3$ 乗根(オメガ)の性質と式の値
こんにちは、スマスクの数学講師です。 今回のテーマは、数学 II の重要単元**「$ 1 $の$ 3 $ 乗根 $ \omega $(オメガ)」**です。 この問題は、定期テストから入試の基礎問題まで本当によく出ます。 ポイントはたった $2$ つの式を使いこなすこと。これさえ押さえれば、複雑な計算も怖くありませんよ!
基本性質の確認
まず、$ 1 $の$ 3 $ 乗根 $\omega$ の定義を確認しましょう。 $x^3 = 1$ を変形すると、$ x^3 – 1 = 0 $ となり、因数分解すると
$$ (x – 1)(x^2 + x + 1) = 0 $$
となります。 $\omega$ は「虚数であるもの」なので、$ x \neq 1 $ です。つまり、$ \omega $ は後ろのカッコ内、$ x^2 + x + 1 = 0 $ の解になります。 ここから導かれる超重要な $2$ つの性質は以下の通りです。
-
$ 3 $ 乗すると $1$ になる:
$ \omega^3 = 1 $
(これは次数の高い計算、例えば $\omega^{100}$ などを簡単にするために使います)
-
$ 2 $ 次方程式の解である:
$ \omega^2 + \omega + 1 = 0$
(ここから $\omega^2 + \omega = -1$ などの変形に使います)
では、これを使って小問を解いていきましょう。
(ア) $\omega^2 + \omega$ の値
性質 $2$ の式 $\omega^2 + \omega + 1 = 0$ を移項するだけですね。
$$ \omega^2 + \omega = -1 $$
これが基本中の基本です。
(イ) $\omega^{10} + \omega^5$ の値
次数が高いときは、性質 $1$ の $\omega^3 = 1$ を使って次数を下げます(「次数下げ」と言います)。
- $\omega^{10} = (\omega^3)^3 \cdot \omega = 1^3 \cdot \omega = \omega$
- $\omega^5 = \omega^3 \cdot \omega^2 = 1 \cdot \omega^2 = \omega^2$
よって、与式は以下のように変形できます。
$$ \omega^{10} + \omega^5 = \omega + \omega^2 $$
これは(ア)と同じ形ですね。
$$ \omega + \omega^2 = -1 $$
(ウ) $\frac{1}{\omega^{10}} + \frac{1}{\omega^5} + 1$ の値
先ほどの計算結果を利用しましょう。$ \omega^{10} = \omega $ 、$ \omega^5 = \omega^2 $ でしたね。
$$ \text{与式} = \frac{1}{\omega} + \frac{1}{\omega^2} + 1 $$
分数の計算なので通分しても良いですが、ここでは**「分母の次数下げ」テクニック**を紹介します。 $\frac{1}{\omega}$ の分母分子に $\omega^2$ をかけると、$ \frac{\omega^2}{\omega^3} = \frac{\omega^2}{1} = \omega^2 $ になります。 同様に、$ \frac{1}{\omega^2} = \omega $ です。
すると、式はとてもシンプルになります。
$$ \omega^2 + \omega + 1 $$
これは性質 $2$ そのものですね!
$$ 0 $$
(エ) $(\omega^2 + 5\omega)^2 + (5\omega^2 + \omega)^2$ の値
そのまま展開すると計算が大変です。 ここでも $\omega^2 + \omega = -1$ をうまく使って、カッコの中を簡単にしましょう。
- 前のカッコ: $\omega^2 + 5\omega = (\omega^2 + \omega) + 4\omega = -1 + 4\omega$
- 後ろのカッコ: $5\omega^2 + \omega = 4\omega^2 + (\omega^2 + \omega) = 4\omega^2 – 1$
これを与式に代入して展開します。
$$ \begin{aligned} \text{与式} &= (-1 + 4\omega)^2 + (4\omega^2 – 1)^2 \ &= (1 – 8\omega + 16\omega^2) + (16\omega^4 – 8\omega^2 + 1) \end{aligned} $$
ここで、$ \omega^4 = \omega^3 \cdot \omega = \omega $ なので、
$$ \begin{aligned} &= 1 – 8\omega + 16\omega^2 + 16\omega – 8\omega^2 + 1 \ &= 8\omega^2 + 8\omega + 2 \ &= 8(\omega^2 + \omega) + 2 \end{aligned} $$
カッコ内はまたしても $-1$ ですね。
$$ 8(-1) + 2 = -8 + 2 = -6 $$
【解答】
$$ \fbox{ア} = -1 $$
$$ \fbox{イ} = -1 $$
$$ \fbox{ウ} = 0 $$
$$ \fbox{エ} = -6 $$
【まとめ】 $\omega$ 問題攻略のポイント
- 定義式をすぐに書く!
問題文に「$ 1 $の$ 3 $ 乗根 $ \omega $」とあったら、反射的に以下の $2$ つを書きましょう。
- $\omega^3 = 1$ (次数下げに使う)
- $\omega^2 + \omega + 1 = 0$ (式の値を求めるのに使う)
- 計算を楽にする工夫 そのまま代入せず、常に「次数を下げる」「$ \omega^2 + \omega = -1 $ の形を作る」ことを意識しましょう。
【解き直しのすすめ】 計算力を確実に身につける
解説を読んで「なるほど」と思っても、実際に自分で計算してみると「あれ、符号が…」「展開が面倒…」となることがよくあります。 特に(エ)のような計算問題は、途中でミスをしない集中力も実力のうちです。
今すぐ、解説を閉じて、もう一度(エ)の計算を最後まで自分の手でやり切ってみてください。 スムーズに $-6$ にたどり着けたら、この単元はバッチリです!
【質問がある方はスマスク先生 LINE 公式アカウントへ】 数学の悩み相談
「$ \omega $ の問題、もっと難しいパターンが出たらどうしよう…」「複素数が全体的に苦手」など、数学の悩みはありませんか? 独学で詰まってしまうと時間がもったいないですよね。 LINE 公式アカウントでは、勉強の質問や進路相談を受け付けています。気軽にメッセージを送ってくださいね!

