【問題】 条件付き確率と確率の乗法・加法定理
まずは、今回の問題文を整理しましょう。3つの異なるパターンの確率問題です。
問題1:アンケートと条件付き確率 ある地域で、A, Bの2つの質問によるアンケート調査をした結果、質問Bにイエスと答えた人は全体の $48\%$ であった。また、2つの質問をともにイエスと答えた人は全体の $27\%$ であった。この調査をした全員の中から1人を無作為に選んだとする。その人が質問Bにイエスと答えていたとき、質問Aにもイエスと答えている確率を求めよ。
問題2:玉の追加と確率(ポリアの壺モデル) 白玉7個と赤玉3個の入った袋がある。玉を1個取り出し、その玉と同じ色の玉をもう1個加えて、2個の玉を袋にもどす。よく混ぜた後、また1個取り出すとき、白玉が取り出される確率を求めよ。
問題3:箱選びと玉の取り出し 3つの箱A, B, Cに赤玉と白玉が入っている。Aには赤玉3個と白玉1個、Bには赤玉2個と白玉2個、Cには赤玉1個と白玉3個が入っている。無作為に1つの箱を選び、その中から2個の玉を同時に取り出すとき、それが赤玉と白玉である確率を求めよ。
【重要】 解説を読む前に、まずは紙とペンを用意して、自分自身の力で式を立ててみましょう。 「条件付き確率」の公式はパッと思い浮かびますか?「玉を戻す」操作の状況変化をイメージできますか?
…図を描いたり、計算したりしてみましたか? それでは、解説を始めます。
【解説】 確率の「状況整理」と「公式の使い分け」
こんにちは、スマスクの数学講師です。
今回は確率の単元から、多くの生徒さんが躓きやすい**「条件付き確率」と「事象の分割(場合分け)」**に関する問題です。
確率は、計算自体は単なる分数のかけ算や足し算で終わることが多いのですが、「どの状況で足すのか、掛けるのか」の判断が非常に重要です。 特に条件付き確率は、「何が分母(全体)になるのか」を取り違えてミスをするケースが後を絶ちません。
一つずつ、状況を整理しながら解きほぐしていきましょう。
問題1:条件付き確率の攻略
「その人が質問Bにイエスと答えていたとき」という言葉に注目してください。 これが条件です。つまり、「全体」を「全回答者」ではなく「Bにイエスと答えた人」に絞って考えなさい、ということです。
条件付き確率の公式を確認しましょう。事象 $A$ が起きる確率を $P(A)$ と書くとき、事象 $B$ が起こったときに事象 $A$ が起こる条件付き確率 $P_B(A)$ は以下の通りです。
$$ P_B\left( A \right) = \frac{P\left( A \cap B \right)}{P\left( B \right)} $$ここで、問題文から数値を拾います。
- $P(B)$ (Bにイエスと答えた確率) $= 48\% = \frac{48}{100}$
- $P(A \cap B)$ (AもBもイエスと答えた確率) $= 27\% = \frac{27}{100}$
これを公式に当てはめます。
$$P_B\left( A \right) = \frac{\frac{27}{100}}{\frac{48}{100}} $$分母と分子に100を掛けて、分数を解消します。
$$ P_B\left( A \right) = \frac{27}{48} $$あとは約分です。3で割れそうですね。
$$P_B\left( A \right) = \frac{9}{16} $$これが答えです。「条件がついたときは、分母が縮小する」というイメージを持ちましょう。
問題2:状況が変化する確率(推移)
この問題は、1回目の結果によって、2回目の袋の中身(分母と分子)が変わるのがポイントです。 こういう時は、樹形図や場合分けをして考えるのが鉄則です。
2回目に白玉を取り出すパターンは、以下の2通りしかありません。
- 1回目が白玉 $\rightarrow$ 白玉が増える $\rightarrow$ 2回目も白玉
- 1回目が赤玉 $\rightarrow$ 赤玉が増える $\rightarrow$ 2回目は白玉
それぞれの確率を計算して、最後に足し合わせます(これらは互いに排反、つまり同時には起こらないからです)。
【パターン1:白 $\to$ 白】
- 初期状態:白7、赤3(計10個)
- 1回目に白を引く確率: $\frac{7}{10}$
- 変化:引いた白1個+追加の白1個=計2個の白玉を戻す。
- 袋の中身:白8、赤3(計11個)になります。
- ここから白を引く確率: $\frac{8}{11}$
よって、このパターンの確率は、
$$ \frac{7}{10} \times \frac{8}{11} = \frac{56}{110} $$【パターン2:赤 $\to$ 白】
- 初期状態:白7、赤3(計10個)
- 1回目に赤を引く確率: $\frac{3}{10}$
- 変化:引いた赤1個+追加の赤1個=計2個の赤玉を戻す。
- 袋の中身:白7、赤4(計11個)になります。
- ここから白を引く確率: $\frac{7}{11}$
よって、このパターンの確率は、
$$\frac{3}{10} \times \frac{7}{11} = \frac{21}{110} $$【合計】 2つの確率を足します。
$$ \frac{56}{110} + \frac{21}{110} = \frac{77}{110} $$11で約分できますね。
$$\frac{7}{10} $$面白いことに、最初に白玉を引く確率と同じになりましたね。
問題3:原因の確率(箱選び)
これも問題2と同様に、**「どの箱を選んだか」**で場合分けをして、最後に足し合わせます。 「箱を選ぶ」というアクションを忘れて、いきなり玉の計算に入らないように注意してください。 箱を選ぶ確率は、A, B, Cどれも等しく $\frac{1}{3}$ です。
【パターンA:箱Aを選ぶ】
- 箱Aを選ぶ確率: $\frac{1}{3}$
- 箱Aの中身:赤3、白1(計4個)
- ここから2個取り出す全事象: $_4C_2 = \frac{4 \times 3}{2 \times 1} = 6$ 通り
- 赤1、白1を取り出す事象: $_3C_1 \times _1C_1 = 3 \times 1 = 3$ 通り
- 確率: $\frac{3}{6} = \frac{1}{2}$
よって、パターンAの確率は:
$$ \frac{1}{3} \times \frac{1}{2} = \frac{1}{6} $$【パターンB:箱Bを選ぶ】
- 箱Bを選ぶ確率: $\frac{1}{3}$
- 箱Bの中身:赤2、白2(計4個)
- ここから2個取り出す全事象: $_4C_2 = 6$ 通り
- 赤1、白1を取り出す事象: $_2C_1 \times _2C_1 = 2 \times 2 = 4$ 通り
- 確率: $\frac{4}{6} = \frac{2}{3}$
よって、パターンBの確率は:
$$\frac{1}{3} \times \frac{2}{3} = \frac{2}{9} $$【パターンC:箱Cを選ぶ】
- 箱Cを選ぶ確率: $\frac{1}{3}$
- 箱Cの中身:赤1、白3(計4個)
- ここから2個取り出す全事象: $_4C_2 = 6$ 通り
- 赤1、白1を取り出す事象: $_1C_1 \times _3C_1 = 1 \times 3 = 3$ 通り
- 確率: $\frac{3}{6} = \frac{1}{2}$
よって、パターンCの確率は:
$$ \frac{1}{3} \times \frac{1}{2} = \frac{1}{6} $$【合計】 最後に3つの確率を足します。通分(分母を18に)しましょう。
$$\frac{1}{6} + \frac{2}{9} + \frac{1}{6} $$$$ \= \frac{3}{18} + \frac{4}{18} + \frac{3}{18} $$$$ \= \frac{10}{18} $$約分して、答えが出ます。
$$ \frac{5}{9} $$
【解答】
問題1
$$ \frac{9}{16} $$問題2
$$\frac{7}{10} $$問題3
$$ \frac{5}{9} $$
まとめ & 確率の学習ポイント
- 条件付き確率: 「~のとき」という条件が来たら、それが新しい分母になります。「全体」を縮小して考えるクセをつけましょう。
- 推移する確率: 玉を戻したり追加したりする場合は、**「その時点での総数」**がどう変わったかを丁寧にメモしましょう。暗算はミスの元です。
- 事象の分割: 複数のルート(箱Aの場合、箱Bの場合…)があるときは、それぞれの確率を出して最後に足し算(和の法則)を使います。
【解き直しのすすめ】 「わかった」で終わらせない
解説を読んで「なるほど」と思っても、それは**「インプットできただけ」**です。 確率の問題は、少し問題文が変わるだけで「あれ、どっちだっけ?」と混乱しやすい分野です。多くの生徒さんが、解説を聞いている時は頷いているのに、テストになると手が止まってしまいます。
今、この画面を閉じて、もう一度問題文だけを見てください。 真っ白な紙に、樹形図や計算式を再現できますか? 条件付き確率の分母と分子を、迷わずにセットできますか?
もし少しでも手が止まったら、それは「理解の穴」がある証拠です。その穴を埋めるのは、あなた自身の「解き直し」だけですよ。頑張って!
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