【問題】
160 $i$ を虚数単位とし、$ a, b $ は実数とする。$ 3 $ 次方程式 $x^3 + ax^2 + bx + 40 = 0$ が $-1+3i$ を解にもつとき、$ a = \fbox{ア} $, $b = \fbox{イ}$ である。このとき,他の解を求めると $\fbox{ウ}$ と $\fbox{エ}$ である。ただし,$ \fbox{エ} $ は実数である。$ \alpha = -1+3i $, $ \beta = \fbox{ウ} $, $\gamma = \fbox{エ}$ とおくとき,
$$ \frac{1}{\alpha} + \frac{1}{\beta} + \frac{1}{\gamma} = \fbox{オ} $$
である。(名城大)
⚠️ 生徒のみなさんへ ⚠️ 解説を見る前に、まずはペンを持って自分のノートに解いてみましょう。 「虚数解を持つときの実数係数の方程式」には、鉄板の解き方があります。計算力だけでなく、知識の使い方が問われる良問です。
…自分の力で解きましたか? それでは、解説を始めます。どこでつまずいたかを確認しながら読んでくださいね。
【解説】 実数係数の $3$ 次方程式と複素数解
こんにちは、スマスクの数学講師です。 今回のテーマは、数学 II の**「複素数と方程式」**における最重要パターンの一つです。 この問題を見た瞬間に、「あ、代入するんじゃなくて、アレを使うんだな」と思いついた人は、基礎がしっかり身についていますよ。
ポイントは 「実数係数なら、共役(きょうやく)な複素数も解になる」 という性質と 「解と係数の関係」 です。
1. 隠れた解を見つける
問題文に 「$ a, b $ は実数」 と書いてありますね。これが最大のヒントです。 実数係数の $n$ 次方程式が虚数解 $p + qi$ を持つならば、その共役な複素数 $ p – qi $ も必ず解になります。
今回、 $x = -1 + 3i$ が解なので、もう一つの解( $\beta$ としましょう)は自動的に決まります。
$$ \beta = -1 – 3i $$
これが $\fbox{ウ}$ です。
2. 3 つ目の解と係数を求める(解と係数の関係)
方程式に $x = -1+3i$ を代入して計算するのは、計算ミスのもとなのでオススメしません。 ここでは 「3 次方程式の解と係数の関係」 を使いましょう。スマートに解けます。
3 つの解を $ \alpha = -1+3i $, $ \beta = -1-3i $, $ \gamma $(実数解 $\fbox{エ}$)とします。
解と係数の関係より:
-
3 つの解の和: $\alpha + \beta + \gamma = – \frac{a}{1} = -a$
-
2 つずつの積の和: $ \alpha\beta + \beta\gamma + \gamma\alpha = \frac{b}{1} = b$
-
3 つの解の積: $ \alpha\beta\gamma = – \frac{40}{1} = -40 $
まず、既知の $\alpha, \beta$ の和と積を計算しておきます。
$\alpha + \beta = (-1+3i) + (-1-3i) = -2$
$\alpha\beta = (-1+3i)(-1-3i) = (-1)^2 – (3i)^2 = 1 – (-9) = 10$
これらを 3 番目の式(積の式)に代入して $\gamma$ を求めます。
$10 \cdot \gamma = -40 \implies \gamma = -4$
これで実数解 $\fbox{エ} = -4$ が求まりました。
次に 1 番目の式(和の式)から $a$ を求めます。
$-2 + (-4) = -a \implies -6 = -a \implies a = 6$
よって $\fbox{ア} = 6$ です。
最後に 2 番目の式から $b$ を求めます。
$\alpha\beta + \gamma(\alpha + \beta) = b$
$10 + (-4)(-2) = b \implies 10 + 8 = b \implies b = 18$
よって $\fbox{イ} = 18$ です。
3. 式の値を求める
最後の $\frac{1}{\alpha} + \frac{1}{\beta} + \frac{1}{\gamma}$ ですが、一つずつ代入して有理化するのは大変です。 通分してみましょう。
$$ \frac{1}{\alpha} + \frac{1}{\beta} + \frac{1}{\gamma} = \frac{\beta\gamma + \alpha\gamma + \alpha\beta}{\alpha\beta\gamma} $$
分母は「3 つの解の積」、分子は「2 つずつの積の和」になっていますね。 これらは先ほど求めた係数を使って表せます。
- 分子 $= b = 18$
- 分母 $= -40$
よって、
$$ \frac{18}{-40} = – \frac{9}{20} $$
これが $\fbox{オ}$ です。
【解答】
$$ \fbox{ア} = 6, \quad \fbox{イ} = 18 $$
$$ \fbox{ウ} = -1-3i, \quad \fbox{エ} = -4 $$
$$ \fbox{オ} = -\frac{9}{20} $$
【まとめ】 複素数と方程式の必勝パターン
- 「実数係数」という条件を見逃さない: これがあれば、「共役な複素数も解である」ことが即座に使えます。
- 解と係数の関係を活用する:
解を直接代入して連立方程式を解くよりも、解と係数の関係を使ったほうが計算量が圧倒的に少なく、ミスも減らせます。
- $\alpha+\beta+\gamma = – \frac{a}{1}$
- $\alpha\beta+\beta\gamma+\gamma\alpha = \frac{b}{1}$
- $\alpha\beta\gamma = – \frac{d}{1}$ (定数項のマイナス)
- 対称式の利用: $\frac{1}{\alpha} + \frac{1}{\beta} + \frac{1}{\gamma}$ のような対称式は、通分することで基本対称式(和・積など)に帰着させることができます。
【解き直しのすすめ】 「知っている」を「使える」に
解説を読んで「解と係数の関係を使えばよかったのか!」と気づいたあなた。それは素晴らしい第一歩です。 ですが、実際に試験会場でその発想が出てくるには、自分の手を動かして経験値を積むしかありません。
特に最後の分数の計算、わざわざ $\frac{1}{-1+3i}$ を有理化しようとして手が止まったりしませんでしたか? 「通分すれば係数がそのまま使える」というテクニックは、知っているだけで数分の時間を短縮できます。
今すぐ、解説を閉じて、真っ白な紙にもう一度最初から計算過程を書いてみてください。 スラスラと最後までたどり着けたら、この単元は合格です!
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「3 次方程式の解と係数の関係が覚えられない…」「複素数の計算でいつも符号ミスをする」など、数学の悩みはありませんか? 独学で詰まってしまうと時間がもったいないですよね。 LINE 公式アカウントでは、勉強の質問や進路相談を受け付けています。気軽にメッセージを送ってくださいね!

