【数学II解説】放物線上の点と直線の距離の最小値問題を攻略!点と直線の距離の公式と垂線の足の求め方

【問題】

170 $xy$ 平面において,曲線 $y=x^2+1$ 上の点 $P(t, t^2+1)$ から直線 $y=x$ に下ろした垂線 $PH$ の長さを $f(t)$ とするとき,次の問いに答えよ。

(1) $t$ の関数 $f(t)$ を求めよ。 (2) $f(t)$ の最小値と,そのときの $t$ を求めよ。 (3) $f(t)$ を最小とするような $P, H$ の座標を求めよ。 (愛知教育大)


⚠️ 生徒のみなさんへ ⚠️ 解説を見る前に、まずはペンを持って自分のノートに解いてみましょう。 「点と直線の距離」の公式はパッと出てきますか? また、絶対値の中身の符号判定も重要なポイントです。

…自分の力で解きましたか? それでは、解説を始めます。どこでつまずいたかを確認しながら読んでくださいね。


【解説】 点と直線の距離・関数の最小値

こんにちは、スマスクの数学講師です。 今回のテーマは、数学 II の図形と方程式における「点と直線の距離」の応用問題です。 この問題は、単に公式に当てはめるだけでなく、「グラフの位置関係」を把握しているかが問われる良問です。国立大学の入試問題ですが、基礎を丁寧に積み上げれば必ず完答できますよ。

(1) 点と直線の距離の公式を使う

まずは、点 $P$ と直線 $y=x$ の距離 $f(t)$ を立式しましょう。 直線の方程式は、一般形 $ax + by + c = 0$ の形にするのが鉄則です。

$$ y = x \quad \Longleftrightarrow \quad x – y = 0 $$

点 $P(t, t^2+1)$ と 直線 $x – y = 0$ の距離 $f(t)$ は、公式より次のようになります。

$$ f(t) = \frac{|1 \cdot t + (-1) \cdot (t^2+1) + 0|}{\sqrt{1^2 + (-1)^2}} $$

$$ f(t) = \frac{|t – t^2 – 1|}{\sqrt{2}} = \frac{|-(t^2 – t + 1)|}{\sqrt{2}} = \frac{|t^2 – t + 1|}{\sqrt{2}} $$

ここで、絶対値記号を外せるか確認しましょう。 中身の $g(t) = t^2 – t + 1$ について、判別式 $D$ をとると、

$$ D = (-1)^2 – 4 \cdot 1 \cdot 1 = 1 – 4 = -3 < 0 $$

$t^2$ の係数が正で、$ D < 0 $ なので、この 2 次式は常に正です。(平方完成してもわかりますね) よって、絶対値記号はそのまま外せます。

$$ f(t) = \frac{t^2 – t + 1}{\sqrt{2}} $$

(2) 2 次関数の最小値

(1) で求めた関数 $f(t)$ の最小値を求めます。 分母は定数 $\sqrt{2}$ なので、分子の $t^2 – t + 1$ が最小になるときを考えれば OK です。 2 次関数の最大・最小といえば……そう、平方完成ですね!

$$ t^2 – t + 1 = \left( t – \frac{1}{2} \right)^2 – \frac{1}{4} + 1 = \left( t – \frac{1}{2} \right)^2 + \frac{3}{4} $$

これを $f(t)$ の式に戻します。

$$ f(t) = \frac{1}{\sqrt{2}} \left\lbrace \left( t – \frac{1}{2} \right)^2 + \frac{3}{4} \right\rbrace $$

この式から、 $t = \frac{1}{2}$ のとき、最小値 $\frac{1}{\sqrt{2}} \cdot \frac{3}{4}$ をとることがわかります。

最小値の計算:

$$ \frac{3}{4\sqrt{2}} = \frac{3\sqrt{2}}{8} $$

(3) 点 P, H の座標決定

最後に、最小となるときの座標を求めます。

点 P の座標 $t = \frac{1}{2}$ を $P(t, t^2+1)$ に代入するだけです。

$$ x = \frac{1}{2} $$

$$ y = \left( \frac{1}{2} \right)^2 + 1 = \frac{1}{4} + 1 = \frac{5}{4} $$

よって、$ P \left( \frac{1}{2}, \frac{5}{4} \right) $

点 H の座標 点 $ H $は、点 $ P $から直線 $y=x$ に下ろした垂線の足です。 つまり、直線 $ PH $の方程式と、直線 $y=x$ の交点を求めれば良いわけです。

  1. 直線 PH の傾き 直線 $y=x$ の傾きは $1$ です。垂直に交わる 2 直線の傾きの積は $-1$ なので、直線 $ PH $の傾きは $-1$ となります。

  2. 直線 PH の式 傾きが $-1$ で、点 $P \left( \frac{1}{2}, \frac{5}{4} \right)$ を通る直線の式は、

$$ y – \frac{5}{4} = -1 \left( x – \frac{1}{2} \right) $$

$$ y = -x + \frac{1}{2} + \frac{5}{4} $$

$$ y = -x + \frac{7}{4} $$

  1. 交点 H の算出 $y = x$ と $y = -x + \frac{7}{4}$ を連立します。

$$ x = -x + \frac{7}{4} $$

$$ 2x = \frac{7}{4} \quad \Longrightarrow \quad x = \frac{7}{8} $$

$y=x$ 上の点なので、$y$ 座標も $\frac{7}{8}$ です。


【解答】

(1)

$$ f(t) = \frac{t^2 – t + 1}{\sqrt{2}} $$

(2) $t = \frac{1}{2}$ のとき,最小値 $\frac{3\sqrt{2}}{8}$

(3)

$$ P \left( \frac{1}{2}, \frac{5}{4} \right), \quad H \left( \frac{7}{8}, \frac{7}{8} \right) $$


【まとめ】 図形と方程式の重要ポイント

  • 点と直線の距離の公式: 点 $(x_1, y_1)$ と直線 $ax+by+c=0$ の距離 $d$ は、

$$ d = \frac{|ax_1 + by_1 + c|}{\sqrt{a^2 + b^2}} $$

まずはこれを正確に覚えていることがスタートラインです。

  • 絶対値の処理: 中身の符号を確認し、常に正であれば絶対値を外せます。グラフの位置関係(放物線が直線より上にあるなど)をイメージするとミスが減ります。
  • 垂線の足の求め方: 「傾きの積が $-1$」を利用して垂線の方程式を求め、元の直線と連立させて交点を出す方法が最も確実です。

【解き直しのすすめ】 計算力を確実に身につける

解説を読んで「なるほど」と思っても、実際に自分で計算してみると「分数の計算でミスをした」「絶対値を外し忘れた」といったことがよくあります。 特に (3) の $ H $の座標を求める手順は、計算量も多く、ミスの温床になりやすい部分です。

今すぐ、解説を隠して、もう一度最初から最後まで計算しきれるかチャレンジしてみてください。 白紙の状態からスラスラと解答を作れれば、この単元の実力は本物です!


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