【問題】
$\vec{a}$、$\vec{b}$ を平面上のベクトルとする。$3\vec{a}+2\vec{b}$ と $2\vec{a}-3\vec{b}$ がともに単位ベクトルであるとき、ベクトル $\vec{a}+\vec{b}$ の大きさ $|\vec{a}+\vec{b}|$ の最大値を求めよ。
(横浜市立大)★★★
まずは自力で解いてみてください。「$\vec{p} = 3\vec{a}+2\vec{b}$、$\vec{q} = 2\vec{a}-3\vec{b}$ とおいて $\vec{a}+\vec{b}$ を $\vec{p}$、$\vec{q}$ で表す」という方針が鍵です。自分の力で解きましたか?
では、いまから解説します。
【解説と解答】「新しいベクトル」で置換して最大値を求める
導入:2つの条件を上手に使う方針
$3\vec{a}+2\vec{b}$ と $2\vec{a}-3\vec{b}$ がともに単位ベクトルという条件を、$\vec{a}$ と $\vec{b}$ の成分で書き下すと式が非常に複雑になります。
発想の転換: この2つを「新しいベクトル」と見なして置換します。
$$ \vec{p} = 3\vec{a}+2\vec{b}, \quad \vec{q} = 2\vec{a}-3\vec{b} $$
とおくと、条件は $|\vec{p}| = |\vec{q}| = 1$ とシンプルになります。
使う武器(公式・定理)
ベクトルの内積と大きさ:
$$ |\vec{v}|^2 = \vec{v} \cdot \vec{v} $$
$$ |s\vec{p}+t\vec{q}|^2 = s^2|\vec{p}|^2 + 2st\,\vec{p}\cdot\vec{q} + t^2|\vec{q}|^2 $$
コーシー・シュワルツの不等式(内積の範囲):
$$ -|\vec{p}||\vec{q}| \leq \vec{p}\cdot\vec{q} \leq |\vec{p}||\vec{q}| $$
$|\vec{p}| = |\vec{q}| = 1$ のとき:$-1 \leq \vec{p}\cdot\vec{q} \leq 1$
すでに知っている方は、思考のプロセスに進んでください。
思考のプロセス(Step by Step)
ステップ1:$\vec{p}$、$\vec{q}$ から $\vec{a}+\vec{b}$ を表す
$$ \vec{p} = 3\vec{a}+2\vec{b} \quad \cdots (1) $$
$$ \vec{q} = 2\vec{a}-3\vec{b} \quad \cdots (2) $$
$(1) \times 3 + (2) \times 2$:
$$ 3\vec{p}+2\vec{q} = 13\vec{a} \implies \vec{a} = \frac{3\vec{p}+2\vec{q}}{13} $$
$(1) \times 2 – (2) \times 3$:
$$ 2\vec{p}-3\vec{q} = 13\vec{b} \implies \vec{b} = \frac{2\vec{p}-3\vec{q}}{13} $$
したがって:
$$ \vec{a}+\vec{b} = \frac{5\vec{p}-\vec{q}}{13} $$
ステップ2:$|\vec{a}+\vec{b}|^2$ を $\vec{p}\cdot\vec{q}$ で表す
$$ |\vec{a}+\vec{b}|^2 = \frac{|5\vec{p}-\vec{q}|^2}{169} = \frac{25|\vec{p}|^2 – 10\,\vec{p}\cdot\vec{q} + |\vec{q}|^2}{169} = \frac{26 – 10\,\vec{p}\cdot\vec{q}}{169} $$
ステップ3:最大化
$-1 \leq \vec{p}\cdot\vec{q} \leq 1$ なので、$\vec{p}\cdot\vec{q} = -1$ のとき最大になります。
$$ |\vec{a}+\vec{b}|^2 = \frac{26+10}{169} = \frac{36}{169} $$
$$ \boxed{|\vec{a}+\vec{b}|_{\max} = \frac{6}{13}} $$
ステップ4:$\vec{p}\cdot\vec{q} = -1$ が達成されることを確認する
$\vec{p} = (1, 0)$、$\vec{q} = (-1, 0)$ のとき:
$$ \vec{a} = \frac{(1,0)}{13} = \left(\frac{1}{13},0\right), \quad \vec{b} = \left(\frac{5}{13},0\right) $$
確認:$|3\vec{a}+2\vec{b}| = |(1,0)| = 1$ ✓、$|2\vec{a}-3\vec{b}| = |(-1,0)| = 1$ ✓
$$ |\vec{a}+\vec{b}| = \left|\left(\frac{6}{13},0\right)\right| = \frac{6}{13} \quad \checkmark $$
解答まとめ
$$ |\vec{a}+\vec{b}| \text{ の最大値} = \frac{6}{13} $$
【まとめ】「新しい文字置換」が突破口
| やること | 得られるもの |
|---|---|
| $\vec{p} = 3\vec{a}+2\vec{b}$、$\vec{q} = 2\vec{a}-3\vec{b}$ とおく | $\lvert\vec{p}\rvert=\lvert\vec{q}\rvert=1$ とシンプルに |
| 連立して $\vec{a}+\vec{b}$ を求める | $\vec{a}+\vec{b} = \frac{5\vec{p}-\vec{q}}{13}$ |
| $\lvert\vec{a}+\vec{b}\rvert^2$ を計算 | $\frac{26-10\,\vec{p}\cdot\vec{q}}{169}$ |
| 最大化 | $\vec{p}\cdot\vec{q} = -1$ のとき $\frac{6}{13}$ |
分母の $13$ は $3^2+2^2 = 13$ という係数の二乗和から来ています。
【解き直しのすすめ】「わかった」から「解ける」へ
「解説を読んでわかった!」と「自分で解ける」は全くの別物です。
解き直しアクション:
- $\vec{p}$、$\vec{q}$ の置換を自分で導けるか試してみてください。
- 「$\vec{a}$ と $\vec{b}$ を $\vec{p}$、$\vec{q}$ で表す連立方程式」をノートに書いてみてください。
明日、何も見ずにこの問題が解けるかテストしてみてください。それが本当の実力です。
【最強の暗記法:絞り込みリコールシート】
□ 問題:$\vec{p} = 3\vec{a}+2\vec{b}$、$\vec{q} = 2\vec{a}-3\vec{b}$ から $\vec{a}$ を表す式は?
□ 答:$3\vec{p}+2\vec{q} = 13\vec{a}$ より $\vec{a} = \frac{3\vec{p}+2\vec{q}}{13}$。
□ 問題:$\vec{a}+\vec{b}$ を $\vec{p}$、$\vec{q}$ で表すと?
□ 答:$\vec{a}+\vec{b} = \frac{5\vec{p}-\vec{q}}{13}$。
□ 問題:$|\vec{a}+\vec{b}|^2$ を $\vec{p}\cdot\vec{q}$ で表すと?
□ 答:$\frac{26-10\,\vec{p}\cdot\vec{q}}{169}$。
□ 問題:最大にするには $\vec{p}\cdot\vec{q}$ をどうする?
□ 答:最小($= -1$)にする。
□ 問題:$|\vec{a}+\vec{b}|$ の最大値は?
□ 答:$\sqrt{\frac{36}{169}} = \frac{6}{13}$。
□ 問題:分母の $13$ はどこから来るか?
□ 答:$3^2+2^2 = 13$(係数の二乗和)から来ています。
【友達に教えてあげよう】
「2つのベクトルがともに単位ベクトルという条件から、全然違うベクトルの大きさの最大値を求める問題ってどうやるの?」という友達、周りにいませんか?
この解説を読んだあなたは、もう「条件に出てくるベクトルを新文字で置換し、目標ベクトルを置換後の文字で表す」という確実な方針を持っています。
友達に「まず $\vec{p} = 3\vec{a}+2\vec{b}$、$\vec{q} = 2\vec{a}-3\vec{b}$ とおいてね。逆算すると $\vec{a}+\vec{b} = (5\vec{p}-\vec{q})/13$ になるから…」と説明してみてください。スラスラ説明できたとき、本物の理解になります。
もし同じ単元で詰まっている友達がいたら、このページのURLを送ってあげてください。