【数学II解説】軌跡の問題(アポロニウスの円)の解き方!距離の比1:2の点Pの軌跡

【問題】

184 $xy$ 平面上で、2点 $A(1, 0)$, $B(3, 0)$ があり、点 $P$ は $AP:BP = 1:2$ を満たして動く。このとき、$P$ の描く軌跡は円であり、その中心の座標は $\fbox{ア}$、半径は $\fbox{イ}$ である。 (名城大)


⚠️ 生徒のみなさんへ ⚠️ 解説を見る前に、まずはペンを持って自分のノートに解いてみましょう。 「2点からの距離の比が一定な点の軌跡」はアポロニウスの円と呼ばれる有名なテーマです。 公式を覚えている人もいるかもしれませんが、基本通りに式を立てて計算で導けるようになることが大切ですよ。

…自分の力で解きましたか? それでは、解説を始めます。どこでつまずいたかを確認しながら読んでくださいね。


【解説と解答】 アポロニウスの円(距離の比が一定な点の軌跡)

こんにちは、スマスクの数学講師です。 今回のテーマは、数学 II の図形と方程式における**「軌跡」**です。 「動く点 $P$ の軌跡を求めよ」と言われたら、まずは点 $P$ の座標を $(x, y)$ とおいて、与えられた条件を $x, y$ の方程式にするのが鉄則です。

使う公式の復習

この問題で使うのは、以下の 2 つの知識です。

  1. 2 点間の距離の公式 2 点 $A(x_1, y_1), P(x, y)$ 間の距離の 2 乗は、 $ AP^2 = (x – x_1)^2 + (y – y_1)^2 $
  2. 比例式の変形 $A:B = m:n$ ならば、 $ n A = m B $ 特に距離の式ではルートが出てくるので、両辺を 2 乗して $n^2 A^2 = m^2 B^2$ の形で扱うのが計算ミスのないコツです。

1. 点 P の座標をおいて式を立てる

点 $P$ の座標を $(x, y)$ とします。 条件は $AP:BP = 1:2$ です。 これを比例式の性質を使って変形します。

$$ 2AP = 1BP \quad \Longrightarrow \quad 2AP = BP $$

距離の公式を使うために、両辺を 2 乗します。 (ルートがついたまま計算するのは大変ですからね!)

$$ 4AP^2 = BP^2 $$

2. 座標を代入して計算する

$A(1, 0), B(3, 0)$ なので、距離の公式を用いて代入します。

$$ AP^2 = (x – 1)^2 + (y – 0)^2 = (x – 1)^2 + y^2 $$

$$ BP^2 = (x – 3)^2 + (y – 0)^2 = (x – 3)^2 + y^2 $$

これらを先ほどの式 $4AP^2 = BP^2$ に代入します。

$$ 4 { (x – 1)^2 + y^2 } = (x – 3)^2 + y^2 $$

3. 式を整理して円の方程式にする

ここからは慎重に展開して整理していきましょう。

$$ 4(x^2 – 2x + 1 + y^2) = x^2 – 6x + 9 + y^2 $$

$$ 4x^2 – 8x + 4 + 4y^2 = x^2 – 6x + 9 + y^2 $$

すべての項を左辺に集めます。

$$ 3x^2 – 2x + 3y^2 – 5 = 0 $$

円の方程式の基本形 $(x – a)^2 + (y – b)^2 = r^2$ にするために、まずは $x^2$ と $y^2$ の係数を $1$ にします。 両辺を $3$ で割りましょう。

$$ x^2 – \frac{2}{3}x + y^2 – \frac{5}{3} = 0 $$

定数項を移項して、平方完成を行います。

$$ x^2 – \frac{2}{3}x + y^2 = \frac{5}{3} $$

$$ \left( x – \frac{1}{3} \right)^2 – \left( \frac{1}{3} \right)^2 + y^2 = \frac{5}{3} $$

$$ \left( x – \frac{1}{3} \right)^2 + y^2 = \frac{5}{3} + \frac{1}{9} $$

右辺を通分して計算します。

$$ \frac{5}{3} + \frac{1}{9} = \frac{15}{9} + \frac{1}{9} = \frac{16}{9} $$

よって、求める円の方程式は以下のようになります。

$$ \left( x – \frac{1}{3} \right)^2 + y^2 = \frac{16}{9} $$

$$ \left( x – \frac{1}{3} \right)^2 + y^2 = \left( \frac{4}{3} \right)^2 $$

4. 中心と半径を読み取る

円の方程式の形になったので、中心と半径を読み取ります。

  • 中心: $\left( \frac{1}{3}, 0 \right)$
  • 半径: $\frac{4}{3}$

【解答】

ア: $\left( \frac{1}{3}, 0 \right)$ イ: $\frac{4}{3}$


【まとめ】 軌跡の問題のポイント

  • 「$P(x, y)$ とおく」からスタート: わからなくても、まずは座標を設定することから始めましょう。
  • 「距離の比」は「2 乗の式」へ: $AP:BP = m:n \Longrightarrow n^2 AP^2 = m^2 BP^2$ とすることで、ルートを使わずにスムーズに計算できます。
  • アポロニウスの円: 2 点からの距離の比が $m:n$ (ただし $m \neq n$)である点の軌跡は円になります。この円は、線分 $AB$ を $m:n$ に内分する点外分する点を直径の両端とします。検算としてこの知識を使うのも有効ですよ!
    • 内分点: $\frac{2(1)+1(3)}{1+2} = \frac{5}{3}$
    • 外分点: $\frac{-2(1)+1(3)}{1-2} = -1$
    • 中心(中点): $\frac{5/3 + (-1)}{2} = \frac{2/3}{2} = \frac{1}{3}$ (合っていますね!)

【解き直しのすすめ】 計算力を磨こう

この問題は、立式自体は難しくありませんが、分数の計算や平方完成でミスが出やすい問題です。 解説を読んで理解できたら、もう一度、何も見ずに最後まで計算して、答えが合うか確認してください。 「わかっている」と「計算が合う」の間には大きな壁があります。その壁を越えるのが演習です!


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