【数学II解説】整式の割り算と剰余の定理!難問を解くための「次数下げ」と「式設定」の極意

【問題】

164 (1) $x^{2020} + x^{2021}$ を $x^2 + x + 1$ で割った余りを求めよ。(広島工業大) (2) 整式 $P(x)$ を $(x+1)^2$ で割ったときの余りが $18x + 9$ であり, $x-2$ で割ったときの余りが $9$ であるとき, $P(x)$ を $(x+1)^2(x-2)$ で割ったときの余りを求めよ。(神奈川大)


⚠️ 生徒のみなさんへ ⚠️ 解説を見る前に、まずはペンを持って自分のノートに解いてみましょう。 (1) は「次数下げ」の王道問題、(2) は難関大合格のためには絶対に落とせない「余りの設定」に関する重要問題です。

…自分の力で解きましたか? それでは、解説を始めます。どこでつまずいたかを確認しながら読んでくださいね。


【解説】 整式の割り算と剰余の定理・次数下げ

こんにちは、スマスクの数学講師です。 今回のテーマは、数学 II の「整式の割り算」です。 一見計算が大変そうに見える $2020$ 乗の問題や、条件が複雑な余りの問題ですが、どちらも「式の仕組み」を理解していれば、驚くほどスッキリ解くことができます。

(1) $x^3 = 1$ を利用した次数下げ

$x^{2020} + x^{2021}$ をまともに計算するのは不可能です。 ここで注目するのは、割る式である $x^2 + x + 1$ です。 この式に見覚えはありませんか? そう、$x^3 – 1 = (x-1)(x^2 + x + 1)$ の因数分解に出てくる部分です。

$x^2 + x + 1 = 0$ の解を $\omega$(オメガ)とすると、$\omega^3 = 1$ が成り立ちますね。 割り算の原理を考えるときも、この性質を利用できます。 $x^2 + x + 1$ で割った余りを考えるときは、「$x^2 + x + 1 = 0$ とみなして計算する」あるいは「$x^3 \equiv 1$ ($x^3$ を $1$ に置き換える)」と考えればOKです。

  1. 指数の処理: $x^3$ を $1$ とみなせるので、指数を $3$ で割った余りに注目します。

$$ 2020 = 3 \times 673 + 1 $$

$$ 2021 = 3 \times 673 + 2 $$

よって、

$$ x^{2020} = (x^3)^{673} \cdot x^1 \longrightarrow 1^{673} \cdot x = x $$

$$ x^{2021} = (x^3)^{673} \cdot x^2 \longrightarrow 1^{673} \cdot x^2 = x^2 $$

つまり、元の式 $x^{2020} + x^{2021}$ を $x^2 + x + 1$ で割った余りは、$x + x^2$ を割った余りと同じになります。

  1. 最終的な余りの計算: ここで、「余りは $x^2 + x$ です」と答えてはいけません。 割る式は $2$ 次式($x^2 + x + 1$)なので、余りは $1$ 次式以下でなければなりません。 $x^2 + x$ の中には、まだ $x^2 + x + 1$ が隠れていますね。

$$ x^2 + x = (x^2 + x + 1) – 1 $$

この式は、「$x^2 + x + 1$ で割ると、商が $1$ で 余りが $-1$」であることを示しています。

(2) 余りの設定テクニック(重要!)

$3$ 次式 $(x+1)^2(x-2)$ で割った余りを求める問題です。 普通に考えると、余りは $2$ 次以下なので $ax^2 + bx + c$ とおきたくなりますね。 しかし、文字が $3$ つ($a, b, c$)になると計算が大変です。 ここでは「文字を減らす設定テクニック」を使います。

  1. 余りを賢く設定する: 求める余りを $R(x)$ とします。 問題文に「$(x+1)^2$ で割ると $18x + 9$ 余る」とあります。 全体を $(x+1)^2(x-2)$ で割った余り $R(x)$ も、当然 $(x+1)^2$ で割れば $18x + 9$ 余るはずです。

    そこで、余り $R(x)$ を次のように設定します。

$$ R(x) = a(x+1)^2 + 18x + 9 $$

ここが最大のポイント! こうおけば、文字は $a$ ひとつだけで済みます。

  1. 剰余の定理を使う: もう一つの条件「$x-2$ で割ると $9$ 余る」を使います。 これは剰余の定理より、$P(2) = 9$ ということです。

    元の整式 $P(x)$ の割り算の式は以下のようになります。

$$ P(x) = (x+1)^2(x-2)Q(x) + a(x+1)^2 + 18x + 9 $$

ここで $x = 2$ を代入します。割り切れる部分は $0$ になるので、余りの部分だけ計算すればOKです。

$$ P(2) = a(2+1)^2 + 18(2) + 9 = 9 $$

$$ 9a + 36 + 9 = 9 $$

$$ 9a + 45 = 9 $$

$$ 9a = -36 \quad \Longrightarrow \quad a = -4 $$

  1. 余りを展開して答える: $a = -4$ がわかったので、これを $R(x)$ の式に戻して展開します。

$$ R(x) = -4(x+1)^2 + 18x + 9 $$

$$ = -4(x^2 + 2x + 1) + 18x + 9 $$

$$ = -4x^2 – 8x – 4 + 18x + 9 $$

$$ = -4x^2 + 10x + 5 $$

【解答】

(1) $$ -1 $$

(2) $$ -4x^2 + 10x + 5 $$


【まとめ】 整式の割り算を攻略するポイント

  • 次数下げ ($x^2+x+1$ の場合): 割る式が $x^2+x+1$ のときは、$x^3 = 1$ を利用して高次の項を一気に小さくしましょう。最後に次数が割る式より小さくなっているか(余りの条件を満たしているか)確認するのを忘れずに。
  • 余りの設定 ($ax^2+bx+c$ とおかない): 「$(x-\alpha)^2$ で割った余り」がわかっているときは、求める余りを $a(x-\alpha)^2 + (\text{わかっている余り})$ とおくことで、未知数を $1$ つに減らせます。これは難関大で頻出のテクニックです。

【解き直しのすすめ】 「知っている」と「できる」の違い

解説を読んで「なるほど!」と思っただけでは、試験本番で解けるようにはなりません。特に(2)の問題は、解説を聞けば当たり前に見えますが、いざ自分で白紙の状態から式を立てようとすると、「あれ? どうおくんだっけ?」となりがちです。

今すぐ、解説を隠して、もう一度(2)の問題の式設定から計算までを自分の手で再現してみてください。 「$R(x) = a(x+1)^2 + 18x + 9$」とスムーズに書ければ、あなたの実力は確実にアップしています!


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