【数学II解説】2円の交点を通る円の方程式!円束の公式と定点通過問題の解き方

【問題】

179 $a \neq 1$ とする。円 $C_1: x^2 + y^2 – 4ax – 2ay = 5 – 10a$, 円 $C_2: x^2 + y^2 = 10$, 円 $C_3: x^2 + y^2 – 8x – 6y = -10$ について,次の問いに答えよ。

(1) 円 $C_1$ が原点を通るとき,円 $C_1$ の中心と半径を求めよ。 (2) 定数 $a$ の値にかかわらず円 $C_1$ は定点 A を通る。この定点 A の座標を求めよ。 (3) 円 $C_2$ と円 $C_3$ の 2 つの交点と原点を通る円の中心と半径を求めよ。 (島根大)


⚠️ 生徒のみなさんへ ⚠️ 解説を見る前に、まずはペンを持って自分のノートに解いてみましょう。 「円束(えんそく)」と呼ばれる交点を通る図形の方程式の考え方は、入試数学の超頻出テーマです。(2) の「定点通過」と (3) の「交点を通る円」はセットで理解しておくと強いですよ!

…自分の力で解きましたか? それでは、解説を始めます。どこでつまずいたかを確認しながら読んでくださいね。


【解説と解答】 円の方程式・定点通過・円束

こんにちは、スマスクの数学講師です。 今回は、図形と方程式の単元から「円」に関する総合問題です。 島根大学の過去問ですが、問われている内容は**「代入」「恒等式の考え方」「束(そく)の考え方」**という、数学II の王道テクニックばかりです。

特に (3) は、まともに交点を求めてから計算しようとすると地獄を見ます。 「スマートな解法」を身につけて、計算量を劇的に減らしましょう!

使う公式の復習

解説に入る前に、今回のカギとなる 3 つの道具を確認します。

  1. 点を通る $\Longleftrightarrow$ 座標を代入して成り立つ これは基本ですね。原点 $(0, 0)$ を通るなら $x=0, y=0$ を代入します。
  2. 定数 $a$ の値にかかわらず成り立つ $\Longleftrightarrow$ $a$ についての恒等式 式を $(x, y \text{ の式}) + a(x, y \text{ の式}) = 0$ の形に変形し、両方のカッコ内が $0$ になる点を探します。
  3. 2 円の交点を通る図形の方程式(円束) 2 つの円 $f(x, y) = 0$ と $g(x, y) = 0$ が交わるとき、 $$ $$ $$ $$ k \cdot f(x, y) + g(x, y) = 0 $$ $$ $$ $$ という方程式は、2 円の交点を通る図形を表します。これを使えば、交点の座標を求めずに答えにたどり着けます。

(1) 円 $C_1$ が原点を通るときの中心と半径

まず、円 $C_1$ が原点 $(0, 0)$ を通るという条件を使います。 $C_1$ の式に $x = 0, y = 0$ を代入しましょう。

$$ 0^2 + 0^2 – 4a(0) – 2a(0) = 5 – 10a $$

$$ 0 = 5 – 10a $$

$$ 10a = 5 \quad \Longrightarrow \quad a = \frac{1}{2} $$

$a$ の値が求まりました。これを円 $C_1$ の方程式に戻して、中心と半径を求めます。 $a = \frac{1}{2}$ を代入すると、

$$ x^2 + y^2 – 4\left(\frac{1}{2}\right)x – 2\left(\frac{1}{2}\right)y = 5 – 10\left(\frac{1}{2}\right) $$

$$ x^2 + y^2 – 2x – y = 5 – 5 $$

$$ x^2 + y^2 – 2x – y = 0 $$

中心と半径を知りたいので、平方完成して基本形に変形します。

$$ (x^2 – 2x) + (y^2 – y) = 0 $$

$$ (x – 1)^2 – 1 + \left(y – \frac{1}{2}\right)^2 – \frac{1}{4} = 0 $$

$$ (x – 1)^2 + \left(y – \frac{1}{2}\right)^2 = \frac{5}{4} $$

よって、求める中心と半径は以下の通りです。

解答 中心 $\left( 1, \frac{1}{2} \right)$, 半径 $\frac{\sqrt{5}}{2}$


(2) 定数 $a$ の値にかかわらず通る定点 A

「$a$ の値にかかわらず」というキーワードが出たら、式を $a$ について整理します($a$ の恒等式と見なす)。

元の式:

$$ x^2 + y^2 – 4ax – 2ay – 5 + 10a = 0 $$

$a$ がある項とない項でグループ分けします。

$$ (x^2 + y^2 – 5) + a(-4x – 2y + 10) = 0 $$

$$ (x^2 + y^2 – 5) – 2a(2x + y – 5) = 0 $$

この等式がどんな $a$ でも成り立つためには、カッコの中身が同時に $0$ になれば良いのです。

$$ \begin{cases} x^2 + y^2 – 5 = 0 & \cdots \text{①} \ 2x + y – 5 = 0 & \cdots \text{②} \end{cases} $$

この連立方程式を解きます。 ②より $y = -2x + 5$ 。これを①に代入します。

$$ x^2 + (-2x + 5)^2 – 5 = 0 $$

$$ x^2 + 4x^2 – 20x + 25 – 5 = 0 $$

$$ 5x^2 – 20x + 20 = 0 $$

$$ 5(x^2 – 4x + 4) = 0 $$

$$ 5(x – 2)^2 = 0 $$

よって、$x = 2$ です。 これを $y = -2x + 5$ に代入すると、

$$ y = -2(2) + 5 = 1 $$

したがって、求める定点 A の座標は一つに決まります。

解答 定点 A $(2, 1)$


(3) 2 円の交点と原点を通る円

ここが一番の山場です。 まず、円 $C_2$ と $C_3$ の式を $= 0$ の形に整理しておきましょう。 $C_2: x^2 + y^2 – 10 = 0$ $C_3: x^2 + y^2 – 8x – 6y + 10 = 0$

2 円の交点を通る円の方程式は、定数 $k$ を用いて次のように表せます。

$$ k(x^2 + y^2 – 10) + (x^2 + y^2 – 8x – 6y + 10) = 0 \quad \cdots (*) $$

この円 $(*)$ が、さらに原点 $(0, 0)$ を通るので、$x = 0, y = 0$ を代入して $k$ を決定します。

$$ k(0 + 0 – 10) + (0 + 0 – 0 – 0 + 10) = 0 $$

$$ -10k + 10 = 0 $$

$$ 10k = 10 \quad \Longrightarrow \quad k = 1 $$

$k = 1$ が求まりました! これを $(*)$ の式に戻して整理します。

$$ 1(x^2 + y^2 – 10) + (x^2 + y^2 – 8x – 6y + 10) = 0 $$

$$ 2x^2 + 2y^2 – 8x – 6y = 0 $$

全体を 2 で割ります。

$$ x^2 + y^2 – 4x – 3y = 0 $$

最後に平方完成して、中心と半径を求めます。

$$ (x – 2)^2 – 4 + \left(y – \frac{3}{2}\right)^2 – \frac{9}{4} = 0 $$

$$ (x – 2)^2 + \left(y – \frac{3}{2}\right)^2 = 4 + \frac{9}{4} $$

$$ (x – 2)^2 + \left(y – \frac{3}{2}\right)^2 = \frac{16 + 9}{4} = \frac{25}{4} $$

半径 $r > 0$ なので、$r = \sqrt{\frac{25}{4}} = \frac{5}{2}$ です。

解答 中心 $\left( 2, \frac{3}{2} \right)$, 半径 $\frac{5}{2}$


【まとめ】 図形と方程式の重要テクニック

  • 「$a$ の値にかかわらず通る点」: 式を $a$ について整理して、連立方程式 $(x^2+y^2 \dots) = 0$ かつ $(ax+by+c) = 0$ を解く問題に帰着させましょう。
  • 「2 円の交点を通る円」: まともに交点を出してはいけません! $k(円1) + (円2) = 0$ の公式(円束)を使って、通る点の座標を代入し、$k$ を求めるのが最短ルートです。

【解き直しのすすめ】 「知っている」を「できる」に

解説を読んで「なるほど、円束の公式を使えばいいのか」と納得しただけでは不十分です。 特に (2) の連立方程式の計算や、(3) の平方完成の計算は、実際に手を動かすとミスが出やすいポイントです。

今すぐ、解説を閉じて、もう一度 (3) の問題を最初から最後までノーヒントで解いてみてください。 スラスラと「中心 $(2, 3/2)$」までたどり着けたら、あなたの実力は本物です!


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